世界50カ国以上の国と地域から科学者や学生が集まる、恩納村の沖縄科学技術大学院大学、OIST。そこで、子どもの発達障害について研究する県出身の女性科学者がいます。自身も子育てをしながら働くママは、悩める親にとって頼れる科学者でした。
島袋さん「おはようございます」
ゆめちゃん「おはよー」
島袋さん「これから保育園行ってきます」
ここはOISTの職員や研究者の子どもたちが通う、キャンパス内にある保育施設。島袋さんは毎朝娘のゆめちゃんを送り届けます。
島袋さん「お母さんお仕事行ってくるね」
島袋さんのオフィスがあるのはキャンパスから車で5分ほどのところにある研究施設。産後4か月で復帰したという島袋さん。ここで行っていることとは?
島袋さん「ADHDを持っている子どもたちのお母さんに向けたペアレントトレーニングプログラムを今開発していて」
アメリカの大学で博士号を取得後、2010年からOISTに在籍する島袋さんの専門は、注意欠陥・多動性障害、ADHD。うっかりミスが多いなどの「不注意」、ソワソワして常に動き回っている「多動性」や「衝動性」などの特徴を持つ発達障害で、ADHDを持つ子どもの割合は国内で10%程度と言われています。中でも、島袋さんが特化しているのは、ADHDの子どもを持つ母親のためのプログラムの開発です。
島袋さん「ADHDの影響というものは子ども自身だけではなくて家族への影響そしてお母さんたちへの影響というのもとても深刻なものがあります」
先日、那覇市の書店でそんな島袋さんの研究を紹介するイベントが開かれ、ADHDを持つ子どもの特性として、行動と、その行動の結果から得られる報酬を結び付けられないことや、子どもの褒め方について話しました。
島袋さん「今10円をあげる、500円はちょっと待たないといけないけど、週末あげるといった場合は定期発達時の場合はもちろん待ってから500円をもらいたいですね。でもADHDの子どもの場合は10円を今もらいたい。その方に動機づけが強められるんです。ADHDの子どもたちというのは心理的な報酬が効果があるという研究が出ています。なので子どもたちをまずは大人がすごくよく頑張ったねよくできたねお母さんもうれしいよ先生もうれしいよというのを大げさにできるだけわかるようにしっかりと目を見て大げさにほめてあげるということがとても大切です」
島袋さんらが開発してきたプログラムの中では、こうしたADHDの特質を伝えたり、子どもの良い行動を増やして問題行動を減らすための行動療法を教えたり、母親の心理的なケアを十数回に渡るグループセッションを通して、行ってきました。
そしてそれは、プログラムを受けていない母親に比べストレスを軽減し、子どもに過剰にイライラする反応を軽減するなど様々な効果をもたらすことなどが説明されました。
島袋さん「子どもの行動に対処する自信度、親としての有能感「親として私はできるよ」という気持ちを量ったものですごく上がっています」
講演後、島袋さんのもとには、1人で悩みを抱えていた母親やアドバイスを待っていた多くの人が列を作りました。
発達障害を学ぶ学生「親御さんのプログラムがあることを初めて知ったのでそれがすごく印象深かったです。同じ女性としてすごく励みになりますし私も頑張ってみようというふうに思います」
自身もADHDの男性「得意不得意が激しいものですから人とできないことがあったり。そういったものに対してうまくサポート受けるというのは必要だと思います。でもこれだけ観衆がいたのでとても関心が高いなと思ってそれはすごいなと思いました」
島袋さんは、今後の目標をこう話します。
島袋さん「子どもを育てるって本当に大変なことだと思うのでそれにADHDを持っていたりするお子さんを育てる場合にはそれにプラスでご苦労もあると思うので(今後)研究を通してお子さんを持つ家族や子どもの発達の助けになるプログラムが作っていけたらなと思います」
さて、この日OISTの学生に向けた発表を終えた島袋さん。全速力で走り出したその先には…
キャンパス内で開かれたコンサート。娘のゆめちゃんの出番に、なんとか、間に合いました!
今年は、開発したプログラムを普及させるための重要な1年と話す島袋さん。子どもたちのために、お母さんたちのために走り続けます。