続いては、Qプラスリポートです。ここからは沼尻キャスターにも入ってもらいます。
沼尻キャスター「はい、よろしくお願いします。きょう私がお伝えするのはこちらの「ヒストリア」という本についてです。ベストセラー小説となりドラマ化もされた「テンペスト」の著者でもある、池上永一さんが書いた新作小説になります自身の集大成とまで言い切るこちらの作品に込められた思いを聞いてきました」
革命家、チェ・ゲバラの肖像が表紙を飾る長編小説「ヒストリア」第二次世界大戦中、沖縄戦で家族も住む場所も失い、楽園を求め南米・ボリビアへと渡った女性の激動の一代記です。
著者は、「テンペスト」を代表作に持つ県出身の作家、池上永一さん。これまであまり語られることのなかったボリビア移民についてそして、池上さん自身初めて、沖縄戦について書きました。
池上永一さん「戦後のボリビア移民というのは、琉球政府の政策で、ボリビアへ送られていった人たち。決して英雄譚として語られるものではなく、戦後の沖縄が貧しかった時期、米軍の軍用地の接収によって農地が無くなったせいで生産力がなく沖縄にいられなくなった人たちを、ボリビアが当時の移民を歓迎するという政策に乗っかって送ってしまった」
物語の舞台となるボリビアは、南米の大陸に位置しペルーやブラジルなど5か国に囲まれた国。この地に遠く沖縄から渡ってきた移民たちは、壮絶な現実に抗いながらついに「コロニア・オキナワ」を作り上げました。
池上永一さん「僕は27歳になるまでその事実を知らなかったんです恥ずかしながら。彼らのことを思うとすごく切なくてどういうところなんだろう、ボリビアのコロニア・オキナワには何があるんだろうというその興味が持ち上がって」
今回「ヒストリア」を執筆するにあたり池上さんは実際にボリビアを訪れました。そこで、あることに気付いたといいます。
池上さんに連れられやってきたのは、那覇市・壺屋の街中。小さい頃に見たこの街並みが、池上さんの中でボリビアと沖縄をつなげていました。
池上永一さん「はいボリビアが、こんなところにボリビアが見えるこの感じを見た時に、サンタクルス市の第一環状線の外側の方に、ロス・ポソスという地区があって、日系人が住んでいるんです。この街並みが、僕が子どもの頃にいた沖縄の原風景なんですけど、本当にロス・ポソスの街並みがそっくりで」
池上永一さん「(Q.池上さんにとって、この原風景である街並みと、ボリビアの街並みが似ているというのは、この作品にどういう意味がある?)あの、日系のボリビア人たちが一世の方たちが大変な思いをしてボリビアに行ったと思っています、思っていました、もちろんすごく苦労されたんですけども意外とたくましく現地に根付いて、沖縄的な空間の中でたくましく生きている姿はあって。彼らのことを肯定的にたくましく書こうと、書くべきだと思いました」
ボリビアでの経験をもとに「ヒストリア」の主人公となる女性・知花煉にはボリビア移民たちのたくましさが投影されています。しかし、それで終わることのできない現実が物語には待ち構えています。
池上永一さん「まず、魅力的な物語、魅力的な主人公、読む楽しさを味わいつつ、その中に沖縄戦というテーマが核のように入っているというふうに受け取ってもらえると一番うれしいですけど」
そして、物語は意外な結末に。
池上永一さん「ここで終わる方が形として一番きれいだということに書きながら気付いたんですよね僕も意外でした、最後は。」