Qプラスリポートです。この時期、県内各地で行われるのが綱引きです。先週、南風原町喜屋武では、〝けんか綱〟とも呼ばれる独特の綱引きに地域が沸きました。
集落に響く、激しい怒声。男たちの攻防は、深夜まで続きます。そして。住民がひとつになる伝統。そこには、一本の綱にかける思いがありました。
参加した人「喜屋武のムスマイ(団結)と言うがお互いが結びついて結束力がある。唯一日頃のストレスとかをここで発散できる場所がある故郷があるということだと思う」
集落の熱い夜に密着しました。
南風原町喜屋武。人口わずか1000人の小さな集落です。夕方、綱引き歌が響くと、静かに辺りの熱気が高まっていきます。
地元の人「小学生の頃からやっている。綱のことなら1から10まで監督もしてきた。(綱引きが)好きですね」
豊作を願う旧暦6月25日の「カシチ―」、26日の雨乞い「アミシ」に行われ、住民は「綱むし(ちなむし)」と呼ばれます。その歴史は古く、100年以上とされていますが、はっきりとしたことは分かっていません。
午後7時すぎ。本番を前に、会場では子ども綱が始まりました。
綱引きを子どもたちに教えるのは、野原広寿(のはら・ひろかず)さんと、金城憲治(きんじょう・のりはる)さん。伝統を伝えたい思いがありました。
金城憲治さん「喜屋武の綱の伝統を子どもたちにも受け継いでほしいという気持ちがある」
野原広寿さん「自分たちもこんな風にして育ってきたから同じ経験をしてほしい」
集落を〝東のアガリ〟と〝西のイリ〟にわけて行う綱引き。実はこのふたり、本番では敵同士!
2人「(本番は)全然違いますね」「ノープラン」「触りたくもない」
午後9時。綱引きがいつ始まるのかを聞いてみると…。
地元の人「まだまだだよまだ9時だから10時以降」
開始時間が決まっていない綱引き。本番まで、ともに気持ちを高ぶらせます。
地元の人「これがなくなったら喜屋武は終わります」
午後10時すぎ。会場には多くの人だかりが。
西(イリ)はゆるやかで道幅がありますが、東(アガリ)はカーブした上り坂。
そのため、東(アガリ)の綱は、西(イリ)の綱に比べて、20メートルほど長く作られていて、一方が有利にならないように工夫されています。
松明が灯り、ドラの音が響くと、いよいよ本番です。西(イリ)と東(アガリ)の綱を結ぶカヌチ棒の入れ方で勝負が決まるとされ、男たちの攻防が続きます。
それを見守っていた金城さんと野原さん。しかし、勝負が始まると。住民総出の真剣勝負!激しい攻防の末、今年は東(アガリ)が勝利しました。
野原広寿さん「喜屋武の行事だからね東(アガリ)が勝ったほうがめでたいみたいな感じだからそれはそれでいいんじゃないかなって。もう来年のことを考えている来年は絶対に勝ちたい」
集落を熱くする真夏の夜の綱引き。その伝統は、次の世代に引き継がれていきます。
子どもたち「堂々とけんかして勝つ!」「綱の上に登る!」「勝つ!」
金城憲治さん「はたから見るとけんかっぽく見えるらしいがけんかではないんですよけんかではないのでそういったところを先輩方から受け継いだ綱引きなのでそこをうまく繋げていきたいと思います」