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翁長知事がついに決断しました。辺野古の新基地建設工事について、翁長知事は、工事の差し止めを求める訴えを起こす方針を決め、議会に諮ることを表明しました。

翁長知事が差止訴訟提訴を表明

会見で翁長知事は、「沖縄県としては許可のない岩礁破砕等行為が行われないよう、法的措置を求める必要があると判断いたしました」と述べました。

辺野古では現在護岸の造成が進んでいますが、近く、海底の岩礁を破壊する工事も始まるとみられています。知事の許可なく岩礁を破壊することは、水産資源の保護に関する県の規則に違反すると主張する県側に対し、国は、漁業権が放棄された海域であり、許可を得る必要はないとしています

提訴に必要な議案は20日に開かれる予定の県議会に提出される見通しです。

ここからは取材にあたっている久田記者とお伝えします。

久田記者「はい、提訴が確実となった差止訴訟、争点となるのは「漁業権が存在するのか、しないのか」ですなぜ漁業権が関係してくるのかというと、漁業権がある海では、漁場の水産資源を保護する必要があるからです。自然環境の保護とは違う考え方です」

翁長知事が差止訴訟提訴を表明

久田記者「双方の主張をこちらにまとめました。国は辺野古の海にはすでに漁業権はないとして工事を進めています。しかし県は、漁業権の変更を認める権限は知事にあり、まだ辺野古の海には漁業権があるとして対立している、というわけなんです」

謝花アナウンサー「漁業権があるのか、ないのか、そもそも争いになっているんですね」

久田記者「はい、これまでの国と県の間のやりとりで、裁判での焦点が浮かび上がってきていますで、こちらをご覧ください」

翁長知事が差止訴訟提訴を表明

辺野古の工事をめぐる知事権限の前提となる「漁業権」。国は、名護漁協が持っていた「漁業権」を一部放棄させることで、知事権限の回避を狙いました。

5月30日稲田防衛大臣「辺野古周辺の海域については、漁業法等に定める法的手続きを経て、すでに漁業権は消滅しており、普天間移設事業の今後の工事に際して、岩礁破砕等許可を受ける必要は無いという風に解していると」

「一部放棄」により、「漁業権は消滅している」と断言する防衛省。一方県側は。

翁長知事が差止訴訟提訴を表明

水産課・新里参事「昭和60年の政府見解において、『漁業法上、都道府県知事の免許を受けなければならないことされており、漁協の総会で「共同漁業権の一部放棄」が議決されたとしても、そのことにより漁業権が当然に変更されるものではない』と回答されております」

県が指摘しているのは、32年前、当時の国会議員の質問に対して、総理大臣名で回答された答弁書。

「一部放棄」が決議されたとしても、漁業権が当然に「変更」されるものではないと書かれています。

今回、県はこの矛盾を水産庁に質問しましたが、水産庁も、漁業権は消滅していて、知事の免許は不要だと回答しました。ところがその水産庁自身、過去にはこんな通知を出しています。

翁長知事が差止訴訟提訴を表明

「組合の総会の議決を経た上で、事業者との間で「漁業権の変更(一部放棄)」等を約する旨の契約が交わされる事例が見受けられますが」「法第22条の規定上、このことにより当然に漁業権が変更されるものではありません」

この見解は、5年前、全都道府県に対して通知されたもの。

過去に何度も示されたこの政府見解を辺野古に当てはめれば、名護漁協が決議しただけでは漁業権は失われておらず、本来「知事の免許を受けなければならない」、つまり、工事の是非を判断する権限は、まだ知事にあるはずです。

翁長知事が差止訴訟提訴を表明

菅官房長官「我が国は法治国家であり、最高裁判決、さらには和解条項、この趣旨に従ってですね。国と沖縄が互いに協力して誠実に対応し、辺野古における埋め立て工事を進めていく」

久田記者「県側としては裁判でこうした矛盾点を指摘していきたい考えですが、実は過去には、国や地方自治体が国民に対して「~をしなさい」と義務の履行を求める訴えは、通常、審理の対象とならないという判例が示されています」

翁長知事が差止訴訟提訴を表明

久田記者「今回は、国に対して「知事に工事の許可を申請しなさい」という似た構図の訴えになるので、門前払いされてしまう可能性もあると言われているんです。一方県側は、今回は相手が国民ではなく「国」なのでこの判例に当てはまらないとしていますが、入口に置かれた高いハードルを超えられるかがまず焦点となります。仮にそのハードルを超えたとしても、もし裁判で国の理屈が通れば、どんな埋め立ても地域の民意に関係なく進めることができるということになってしまいます」

謝花「久田記者でした。そもそも海は漁業権を持つ者だけのものではなく、県民一人ひとりの海でもあるはずです。だからこそ県民の代表たる知事に許認可権を与えているのではないでしょうか。「地方自治」をいかに守るかが、いま問われています」