防衛局の中止要請にもかかわらず、10日夜、嘉手納基地では初めてとなる夜間のパラシュート降下訓練が実施されました。
10日夜の訓練ではおよそ15人の兵士が3回に分けて嘉手納基地に降下する様子が確認できました。訓練の様子を確認した嘉手納町の當山町長は、降下したうちの1人が目標を大きく逸れたと指摘し、「基地周辺には密集市街地が形成されていて、そこに降下してくるということになると大きな被害に発展しかねない」と危険な訓練に憤りを示しました。
また嘉手納町住民は「訓練は伊江島じゃなかったんですか?たまには読谷に落ちたりもしましたよね」「安心できないです。いつ自分たちのところに落ちてくるか分からないので」などと話していました。
なぜ住宅密集地も近い嘉手納基地で夜間訓練を強行したのか、ここから記者解説でお伝えします。
久田記者「昨夜この訓練を嘉手納町役場の屋上から見ていましたが、兵士たちが飛行機から飛び降りる瞬間は、目視では確認できないほどの高度でした。訓練に詳しい方にお聞きしたところ、高度3,000mほどの上空から降りたのではないかということでした」
そんな高さから降りて市街地に流されたりしないんですか。
久田記者「心配ですよね。現場で見た限りでは、飛行機は嘉手納基地に対してこのような経路で接近しまして、嘉手納基地の外周よりも北のあたりで降下を始めていました。5分以上も空中を漂って、着地したのはこのあたり。その分、風の影響を受けています。また1人が大きく南へと逸れていったのを見ると、事故の危険性も高い訓練だと改めて認識させられました」
映像を見ても、夜間にこのような訓練をすることは危険ではないのかと感じます。
久田記者「この訓練、実は先月24日の日中にも行われました。このときが嘉手納基地では6年ぶりの実施だったんですが、その後わずか2週間あまりで再び行われたということで、訓練の常態化に対する不安や地元軽視に対する反発が強まっています」
久田記者「嘉手納町議会はきょう、臨時議会を開き抗議決議と意見書を全会一致で可決しました。決議では『一歩間違えば周辺住民を巻き込む重大な事故を引き起こす極めて危険な訓練』と指摘して、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練の全面禁止を求めています。また県も沖縄防衛局長らを呼び出し、緊急に抗議しました。その場で富川副知事は、アメリカ軍がこの訓練に対し驚くべき認識を持っていることを指摘しました」
富川副知事「米軍のホームページ等によると『嘉手納は適している』という旨の記事もありまして、これがよもや嘉手納常駐化するというようなこととか。これまで積み上げた合意の中から外れるようなことがあってはいけないことだと思っております」
久田記者「パラシュート降下訓練を伊江島に集約することは、21年前に日米政府が合意したことです。しかしアメリカ軍が公表した写真には『嘉手納基地の陸域、水域はパラシュート降下訓練に適している』という説明がついていて、軍は嘉手納を使いたいという意思がにじみ出ているわけです。危険な訓練ですから、伊江島でも行わないほうが望ましいのは当然ですが、日本政府は日米合意の遵守をアメリカ側に徹底させなければなりません。これについてのきょうの説明がこちらです」
沖縄防衛局・中嶋局長「嘉手納飛行場についてはあくまでも例外的な場合に限って使用されると。今般、なぜそのような例外的な場合にあたるのかについて、アメリカ側から十分な説明もございませんでした」
結局、どの程度が“例外”にあたるのかはアメリカ軍側のさじ加減ひとつだということが露呈したと思います。
久田記者「日本政府には、例外を強調するのではなく、原則をしっかり守らせる責任があります」