海外展開を図る、県内企業の取り組みを紹介するシリーズ「海外市場に挑む」。最終回のきょうは、県内の農産物をアジアへ売り出そうとする卸売業者の挑戦です。
県内で野菜や果物の卸売業を営む、サニー沖縄。去年10月から週2回、およそ2トンほどの県産、国産の青果をシンガポールへ輸出しています。
きっかけは、去年9月にシンガポールで開かれたフードイベントへの出展でした。安全安心な日本産食材に対する現地の人々の関心の高さに手ごたえを感じ、アジアへ新たな販路拡大をと、シンガポールへの輸出をスタートさせたのです。
経済、環境、交通など、都市の総合的な力を測る、世界の都市総合ランキングで世界第5位のシンガポール。世界銀行の調査では、9年連続で世界で最もビジネス展開に良い国とされています。一方で、農地は極めて少なく、食料の大半は輸入に頼っています。
こちらは現地の大手卸売り会社の倉庫。世界各国の果物や野菜の中に、日本のものもありました。
こちらは、届いたばかりの沖縄産のホウレンソウ。この一袋、シンガポールでは日本円でおよそ550円で販売されます。沖縄のおよそ3倍の値段です。
バンチュン社日本産輸入担当責任者 リリー・タンさん「日本産の青果はとても美味しいし、贈り物にとても喜ばれます」
こちらの、みかんやカボチャもサニー沖縄が、沖縄から輸出したものです。
サニー沖縄の寺井敦子さん。沖縄県の派遣事業を活用して、現地の卸売会社で一月間の研修を行っています。この日は、沖縄から到着した青果のパッケージ作業をしていました。
シールの張り方や包装の仕方、そして、どのような商品が現地の人に好まれるのか。研修を初めておよそ半月、現地での販売戦略が徐々に見えてきたようです。
寺井さん「金柑がおめでたい、大事にされている果物というのはこっちにきて初めてきづきました。金柑とみかんがこの時期に売れるとわかったので、受身でなく（来年は）もう少し準備ができる」
寺井さんは、シンガポールに来る前から、毎日、現地の卸売会社のリリーさんとメールで商談を行なっていました。しかし、実際に現地に来ることで、現地の方が好む色や形など、さらに細かいニーズを知ることができました。
この日は、配達中、沖縄本社の担当者から、沖縄で大量のタンカンを仕入れたと連絡がきました。早速、寺井さんはリリーさんへ売り込みを行います。
以前、台湾産のタンカンを仕入れたことがあるリリーさんは、その時の味があまり美味しくなかったためか、興味を示してくれません。それでも寺井さんは、沖縄産のタンカンはもっと甘くておいしいと、アピールを続けます。
こちらは、シンガポール国内に22店舗展開する大型スーパー。たくさんの商品の中に、日本産の特設コーナーもありました。現地の人が、今、何を欲しがっているのか、日本産の食材にどんなイメージを持っているのか。お客さんから、直接ヒアリングを行います。
寺井さん「日本産は質が良い、健康に良いという答えが多かったです。味がよい、品質も良いというのはシンガポールとやり取りをして、改めて日本の野菜すごいなと光栄に感じている、これをたくさん売りたい。なるべく、丁寧にコミュニケーションをとり、輸出を続けて行くこと、（沖縄産の農作物の）よさをきちんとPRしてやっていきたい。（沖縄で）生産できたものを確実に売れるチャンネルを増やす、可能性を感じています」
同じ頃、沖縄本社では、沖縄に訪れたタイ、香港、そしてマレーシアなどのバイヤーを県内の生産地に招いていました。沖縄の畑で、アジア各地のバイヤーに直接、沖縄の農産物の魅力を伝えます。早くも、シンガポールに次ぐ、新たな市場の開拓に乗り出しているのです。
アジアのハブとして、日本、そして沖縄の農産物をいかに海外の人に届けるか。サニー沖縄の挑戦は続きます。
今回この企業が活用したのは、こちらの県の万国津梁産業人材育成事業です。社員を海外に派遣して様々な研修を行ったり、海外から専門家を沖縄に招へいするなどのプログラムがあります。ご関心がある方は、こちらまでお問い合わせください。
