今日から来月にかけ、3回にわたり、海外で様々な研修を行い、海外展開やインバウンドの強化を図ろうとする県内企業の挑戦を取り上げます。
今日は、世界レベルのガイドツアーのノウハウを得ようとニュージーランドで研修を行う西表島のカヤックツアー会社の挑戦です。
ニュージーランド南島のエイベル・タスマン国立公園。年間を通して、温暖な気候に恵まれ、美しい海岸線と緑豊かな山々が特徴です。
海岸で出会うのはオットセイ。国内外から年間およそ25万人が訪れ、人気のアクティビティは、こうした野生動物との出会いを楽しむシーカヤックや海岸線を眺めながら森の中を歩くトレッキング。
ニュージーランドは、夏の今が観光のトップシーズン。この夏、沖縄からエイベル・タスマンを訪れた2人の若者がいます。
鈴木大介さんと浅野大さん。2人は西表島のツアー会社で働くアウトドアガイド。
鈴木さん「(西表島では)うなぎのぼりに外国人観光客が増えていて、このまま海外の方が増えていくなというのを見越した場合だと、やっぱりもっとツアーの幅を広げないといけない」
2人が研修を行っているのは、エイベル・タスマンでシーカヤックなどのアクティビティを提供するアウトドアツアー会社のWilsons社。
鈴木さん「最初は僕もレスキューの、例えば日本でいうと絆創膏とか、ああいうのかなと思ったんですけど、実は全然違くて、カヌーをいざ持って来たときように直すようのカヌーのロープとか応急処置のテープとか。フレア(発煙筒)とかも(日本では)持たないですね。これも(常に)2個持って行っているので。セイフティー(安全)の面に関してはすごく学ぶ部分がたくさんあります」
今回2人は、沖縄県の派遣事業を活用し、アウトドアアクティビティの先進国ニュージーランドで、外国人を対象にしたガイドのスキルやツアーのオペレーションなどを学ぶため、初めて訪れたのです。
エイベル・タスマン国立公園の入り口、カイテリテリ。鈴木さんたちはおよそ1ヶ月間、ここで研修を行いました。
この日は、半日間のツアーに同行します。参加者は、中国とアメリカからの観光客8人。
ツアー参加者「私たちは、ニュージーランドの南島の美しい場所を全て回っていて、そして特にここは、みんながアウトドアアクティビティをする上で最高の場所だと聞いて来ました。」
ガイド「これはとても重要な部分です。セイフティーストラップです。クリップをとめて、バックルを通してベルトを引いてください。」
そして、いよいよ出発です。
ガイド「もしも緊急事態が起きた時はこのポジションになってください。私の前には、フレアー(発煙筒)が2個あります。防水ケースになっていて、中に発煙筒が入っています。さらにファーストエイドキットも持っています」
鈴木さん「カヌーで出艇してから、すぐにみんなで、セイフティの、これが一番安全な態勢だよというのを説明して、その時に自分が持って来ているギアを全て説明しているので、そういうところもやっぱり、お客さんに安心させる」
鈴木さんと浅野さん、だいぶ現地の環境にも慣れ、ガイドのサポートもできるようになりました。
鈴木さん「本当に初めてですか、すごくいいですね」
まるでリンゴを半分に割ったように見えることからその名前がついた、スプリットアップルロック。こうした奇石や、変化に富んだ海岸線を楽しむのにシーカヤックは最高のアイテムです。
ツアー後半、急に天気が悪くなってきました。風が強くなり、うねりも出て来ました。
鈴木さん「いざ、何かが起きたっていう時の準備がものすごくしっかりしているので、いざツアーに出て、天気が荒れた場合でも自信を持っていつも通りのガイドができている」
世界中からの観光客を、常に安全に引率するガイドには、高度なスキルが求められます。
鈴木さん「今日、中国人のお客さんだったんですけど、1人しか英語ができなくて、1艇のカヤックが全員英語も通用しないような場合で、こういう天候の変化で海の上にいると声も届かない。常に英語のできる人の近くにいて、通訳をしてもらったりしながら、今日はいつもよりもかなりジェスチャーを多く使っていたので、その辺はさすがだなと思いました」
ツアーに参加した中国の観光客「素晴らしかったです。波がとても高かったですが、すごく楽しかったです」
鈴木さん「ニュージーランド全体のガイドのレベルが、技術面から知識面、あとはお客様に対するサービス的な面も全て、基本的なレベルが高いと思います」
Wilsons社・ダリル・ウィルソンCEO「ニュージーランドのアドベンチャーツーリズム業界は、増加する観光客のニーズに応えるため、どんどんプロフェッショナルになってきています。ガイドは(専用の教育機関で)2〜3年間のリスク管理のトレーニングを受け、お客様への対応を学んでいますので、会社に対しても、お客様に対しても、素晴らしい貢献をしてくれます」
世界レベルのガイドツアーをいかに沖縄で展開し、外国人を呼び込むか。鈴木さんたちの所属する西表島のツアー会社では、今後、ニュージーランドのガイドを沖縄に招くなど、継続的な交流を通して、サービスのグローバル化を図っていくことにしています。
日本とニュージーランドは夏と冬が逆ですから、この会社では、日本の夏のピークにはニュージーランドのガイドを呼んで、ニュージーランドの夏には沖縄のガイドが向こうに行く、という交流も考えているということです。
さて、今回この企業が活用したのは、こちらの県の万国津梁産業人材育成事業です。
海外展開やインバウンドを強化するために、社員を海外に派遣して様々な研修を行ったり、海外から専門家を沖縄に招へいする、などのプログラムがあります。ご関心がある方は、ぜひこちらまでお問い合わせください。