現在、県内には障害者の就労支援に取り組む事業所が470カ所あります。きょうはその中で、障害者それぞれの自立への手助けにもなっているある企業を紹介します。全国的にも珍しい業種で、新たな雇用の在り方に取り組む企業の想いとは何なのでしょうか?
比嘉記者「今回の『つながる』は、インターネットゲームの世界にお邪魔しています。このゲームを運営しているのは、新たな障害者の働き方を提案する企業です」
去年8月、那覇市に開所した「サンクスラボ」。およそ70万人の利用者を誇るオンラインゲームをはじめ、インターネットサービスを提供しています。ここで働いているのは、精神や身体にハンディキャップを持つ人たちです。
村上タクオ代表取締役「(ゲームの)ユーザーの中の多くの方々が、コミュニケーションに問題があったり、身体が不自由、難病を患っていて病院や家から出にくい方々が、意外にもネットの中ではすごく活躍している姿と幾度となく対面してきた。その(インターネットの)仕事ができるようになれば、インターネットの中がより充実した社会活動の場に変わっていけるだろうというのがきっかけで、僕たちはこの取り組みを始めました」
サンクスラボの主な業務内容は、オンラインゲームの中でユーザーに操作方法を教えたり、サーバーのメンテナンスをしたり、ブログでの情報発信など主に3つです。
城田吉広マネージャー「全くの未経験者の方でも安心して業務を習得できるように、ゲームを通じてPC操作やタイピングを習得し、ゲームの中でどのような業務があるのかを体感していく。そのあと自らがインターネットでの業務を身に着け活躍できるように工夫をしております」
サポート業務を行う吉田さんも未経験で入社した一人。去年12月、サンクスラボに入社しました。
吉田さん「(仕事で)パソコンをやったことがなかったものですから、ゲームとか、初めてやって色んな体験をしていって、周りに教えてもらってというのが一番楽しいです」
現在は1日5時間、3部制の勤務形態の一番早い勤務時間を選んで働いています。元々一般企業に勤めていた吉田さんですが、15年ほど前、発作に襲われるようになり、働けなくなりました。
吉田さん「最初はてんかんの発作だったんですけれども、てんかんの発作で倒れて仕事もできなくなって」
現在、てんかんと難聴を抱える吉田さん。一緒に暮らしていた母親も亡くなり、一人で生活することになりました。それまでは食品加工を行う作業所に通い生活保護を受けていましたが、どうにか自立しなければ、そんな思いから新しい挑戦を決意しました。
吉田さん「生活保護をもらっていたんですけど。生活保護も長々ともらっているわけにもいかないので。20代の子でまだ働いていない子が何人か(周りに)いる。自分は今年で50歳になるんですが、そういう子みていると、若い子に負けたくないなという意識になって」
余暇は空手や趣味にも没頭するという吉田さん。私生活を充実させつつ、仕事にも大きな目標があります。
吉田さん「(今後)もうちょっとレベルアップして、色んな部分で。今度は逆に教える側になりたいなと思っている」
サンクスラボで社員たちの支援をしている久保田さんはインターネットの分野で技術を身につけ、自立しようとする人たちの可能性を語ります。
サービス管理責任者・久保田遼さん「ご本人からも『あ、自分ってここまでできるんだ』っていうのが見えてきて話をしてくれる。『きょうここまでできました』と、そのときの笑顔はとても素晴らしくて。私たちがこれができるからこれをしなさいというわけではなく、自分にもできるという可能性を私たちがサポートしながら、ご本人が感じられれば、更にご本人にとっての職種に対する可能性というのが見えてくると思う」
今年1月、サンクスラボの拠点は更に広がりました。北谷オフィスの誕生です。
村上さん「この恵まれた沖縄の大自然の中で心も体も心身ともに静養も兼ねた就労支援の場所を作り出していきたいという思いをもって、ビーチ前のロケーションを選びました。沖縄県の方々はもちろんですけれども、県外の方々にも多くの希望を伝えていくことができるだろうと。我々チームメンバーが、願わくば世界の人々に愛されるインターネットサービスを創出し運営を続けていくことができれば理想だなと思っております」