川村「楽園の海案内は水中ビデオカメラマンの長田勇さんです。よろしくお願いします。きょうは「サンゴの白化その後様子」です。」
長田「先日お伝えした、水温の上昇によるサンゴの白化が止まらなかった今年の沖縄。10月に入った今現在をお伝えします。」
川村「それでは早速、見ていきましょう。」
長田「今年の夏のオキナワは、台風がまったく近づくことなく、とても暑い日が多かったんですよ。その影響で、八重山地方では7月からサンゴの白化が見られました。」
川村「そうなんですね。早速、海の中へ。」
長田「水温が31℃に達してから最初のうちは、このようにごく一部のサンゴが白くなったり、色が抜けてパステルカラーのサンゴが目立ってきた感じでした。」
川村「この時は、まだ回復できそうな状態ですね。」
長田「8月に入って水温33℃を記録した水深2m以内の浅瀬のサンゴは、光合成に必要な褐虫藻が完全に抜けてしまっていました。」
川村「かなりの頻度で白化しています。」
長田「9月始めの石垣島周辺では、水深5mに生息している大半のサンゴが白化し始めました。」
川村「こちらのサンゴは回復し始めているんでしょうか?」
長田「一見色が戻ったように見えますが、すでに藻が生えて茶色くなった状態でした。」
川村「褐虫藻が戻ってくることなく、死んでしまったんですね。」
長田「そうなんです。今年の夏、石垣周辺では約7割〜8割のサンゴが死滅してしまったようです。」
川村「では、沖縄本島はどうだったんでしょう。」
長田「沖縄本島でも、八重山から2週間遅れでサンゴの白化が目立つようになりました。9月中旬でも水温30℃ほど。」
川村「 高めですね。」
長田「水温は徐々に下がってきているものの、藻が付いて死んだサンゴも見かけるようになりました。」
川村「こちらでもかなりの白化があったんですね。」
長田「ただ沖縄本島は、白化し始めたのが遅かった分、死んだ割合は40%くらいでしょうか。大半が死滅したと思われがちですが、場所によって全然大丈夫だったポイントもあるんです。」
川村「こちらは、ほぼ白化していませんね。」
長田「こちらは恩納村の海ですね。浅瀬のサンゴ礁が壊滅的に死んでしまった場所から、ボートで5分も離れていない場所です。」
川村「水温は下がったんですか?」
長田「はい、9月に入って沖縄周辺を通過した台風の影響で、水温も徐々に下がり始め、9月末には水温29℃まで落ちました。その後10月初めに通過した台風の影響で水温も27℃まで落ちてきているので、今年は、新たに白化することはないでしょう。」
川村「でも条件も同じサンゴで、白化したのと元気なものでは何の違いがあるんですか?」
長田「水深や水温、透明度、流れ具合などの条件はほぼ一緒。他に考えられる事は、高い水温に強いDNAを持ったサンゴの多いポイントだったのかな、と思います。」
川村「なるほど。こちらのテーブルサンゴは長田さんの手と同じくらいの大きさですね。」
長田「はい、このような小さなサンゴを見ていると、逃げ出した褐虫藻が戻ってきた!というより、そもそも32℃の水温でも、褐虫藻が出て行かなかったように思います。アップで見ると、ポリプが生き生きしているのが分かりますよね。」
川村「小さいからといって、水温上昇に弱いわけではないかもしれませんね。」
長田「サンゴも動物ですから、強いサンゴ、弱いサンゴがあると思います。今年生き残った強いサンゴたちが、来年たくさんの卵を産んでくれることを願っています。」
川村「サンゴには来年も頑張って欲しいですね。以上楽園の海でした。」