さて、ここから特集です。こちらの建物の映像は、1925年に完成した、県内最古の鉄筋コンクリート建築、旧大宜味村役場です。この建物が国の重要文化財に指定されることが決まった、というニュースを、先週の金曜日にお伝えしました。
一方ガラッと変わってきょうはある建物にスポットを当てます。那覇市民会館です。こちらは1970年の完成。こちらも、旧大宜味村役場ほどではないにせよ、長く使われてきましたが、耐震性が低く危険、ということで、無期限の休館に入りました。
また、那覇市久茂地の小学校跡地に移転して、こちらのイメージ図のような新たな建物を建てる計画もあり、古い現在の建物は取壊される可能性が高くなっています。
保存を求める声、再開発を求める声を聞きました。
完成から46年が経った、那覇市民会館。軒を深く取った屋根は、沖縄の伝統的な屋敷にみられるアマハジを思わせ、建物を囲む石垣が、重厚感を与えています。しかし、少し近づいて見てみると、コンクリートの壁が、大きく剥離したあとがあちらこちらに。老朽化は深刻な状態です。
城間那覇市長会見「建物の耐震診断を行ったところ、国の安全性基準より低い結果となり、市民会館の耐震性が不十分との判定となりました。」
診断の結果、建物の地震に対する強度が、国の基準の半分以下の数値だったことが判明。また、外壁の剥離・落下も多く見られていて、那覇市は、安全確保のため、今月13日から無期限の休館としました。
耐震補強を行う場合の費用の算出が進められていますが、見通しは厳しく、那覇市民会館は今、取壊しの危機に立たされています。
舞台演劇を上演できる大ホールを持つ県内で初めての施設として、文化や芸能を発信し続けてきた、那覇市民会館。本土復帰記念式典の会場となるなど、戦後の沖縄を見つめてきた場所でもあります。
城間市長会見「私自身の思い出の中にも、部活動で毎年1回はそこで公演をして、演奏してたという思い出もありますし。市民の皆さんお一人おひとりにこの那覇市民会館は愛されてきたということ。」
市民の記憶を刻むこの建物を残したいと保存運動に取り組む人もいます。
根路銘一級建築士「文化の殿堂として沖縄県民が望んで出来た建物、そういう時代の流れの中で出来た建物ということで、歴史的意味合いが大きいのかなと言う気はします。」
技術的には残していけると思います。
一級建築士の根路銘安史さんは、沖縄のモダン建築としての価値もさることながら、学校行事や成人式など市民の記憶を刻んできた建物を、愛情を持って使い続けてほしいと語ります。
那覇市は、耐震補強をした場合にかかる費用などの調査を開始。有識者による検討委員会も活用して、慎重に検討する、と発表しました。
しかし一方で、新たな那覇市民会館を移転先に建設する計画も進行中。現在の建物の維持は困難とみる関係者もいます。現在の那覇市民会館の跡地の再開発を期待する声は市民からも聞かれます。背景にあるのは、同じく老朽化が進む別の建物の問題です。
玉井栄良会長「那覇市民会館が、久茂地に移転するということを踏まえまして、ぜひ、市民会館跡地にですね、真和志庁舎を作って頂いて」
真和志地区の40の自治会は去年、那覇市民会館の跡地に真和志支所の機能を移転するよう市に要望書を提出。築47年の古い建物を那覇市民会館の跡地に新築移転できれば、渡りに船、というわけです。
玉井栄良会長「交通の便がいいわけですから、今の真和志支所の庁舎に比べたら、非常に交通の便がいいし、高齢者にも行きやすくなるのかなと。」
真和志支所利用者「あ、いいですね、そこらへんだと。私は賛成です。(Q.那覇市民会館跡地はいい考え?)いいと思います。あの辺くらいまでだったら」
新市民会館構想や、移転後の土地の再開発への期待。沖縄の歴史を見つめ、市民とともにあった名建築は、このまま幕をおろすのでしょうか。