シリーズ「人材不足」。きょうは好調な観光業界を取り上げます。急激な観光客の増加に対応するため、各社とも様々な対策を取り始めています。
マハイナ石橋雅彦・常務取締役「もう現状でも厳しいですが、ますます厳しくなると思います。うれしい悲鳴といえばうれしい悲鳴ですけれども」
こう話すのは、美ら海水族館のすぐそばに建つ、マハイナ・ウェルネス・リゾート・オキナワの人事担当者。ホテル間競争に加え、ホテル以外の業界の採用も増えているため、人材確保は今後も厳しい状況が続くと予想しています。
今年4月、このホテルに1人の外国人女性が入社しました。インドネシア人の、サリー・ナルビンさん。アメリカの大学を卒業後、フロリダのディズニーワールドで働き、沖縄にやってきました。
サリーさん「私の大学で専門はテーマパークですよ、だから、エンターテインメントの方は興味があります。ホテルのいろんなことを勉強して、将来はホテルのエンターテインメントの企画、貢献できる人材になっていくと思っております。」
こちらのホテルでは、サリーさんのように将来、ホテルの運営に携わる総合職として、来年、さらに5人の外国人を採用することが決まっています。
石橋雅彦常務取締役「多様性を受け入れたいという、当社の考え方からしてもあまり従業員の国籍とかは関係ないというか、どちらかというと、キャラクターを重視して、採用していきたいと、いろんな人がいていいじゃないかというのが、根っこにある考え方ですので。」
また、客室係や宴会などを担当する労働力確保のためにも、外国人の採用には積極的に取り組みたいとしています。
石橋雅彦常務取締役「学校と連携する、もしくは北部のホテルのいくつかと連携するなどして、数十名単位で学生を受け入れて、かつホテルでアルバイトしていただくとという風なことも近いうちにそういう組織を立ち上げていきたいなと思っています。」
ハイアット佐藤健人総支配人「かなりホテルの数がこれから増えていく計画がある中でですね、人材は将来的に必ず足りなくなるだろうなと。」
去年オープンした外資系ホテル、ハイアットリージェンシー那覇沖縄。優秀な人材確保のため、東京のホテルとの賃金の差に注目しました。
ハイアット佐藤健人総支配人「最初開業するタイミングで、東京に合わせて、10%から15%くらい、県内のホテルの水準よりも賃金を上げていったと。沖縄のホテル業界が魅力的なものでないと、県外とか海外からの流入、または異業種からの流入というのはなかなか難しいかなと思っておりますので。」
朝が早い、なかなか休みが取れない。そんなホテル業界のイメージを払しょくして、憧れの職業に転換していくことが、観光立県沖縄のホテル業界に必要だと、佐藤さんは指摘しています。
ハイアット佐藤健人総支配人「沖縄県のホテルで経験した優秀な子たちが県外でさらにキャリアを上げていくとかですね、場合によっては海外のホテルで活躍していくとか、ていう観光立県の最先端を沖縄が走っていけるようなそんなイメージで。」
観光客の増加をダイレクトに感じるのが、航空会社です。ANAグループでは、全体の業務量が20%以上増加。それに伴って、カウンターやハンドリングスタッフも3年間で170名増員しました。
ANA沖縄空港上原力・人事チームリーダー「外で働く、飛行機のまわりで働く従業員の方がですね、やはり県内の大学・専門学校だけではちょっと採用の方がきびしいということで、県外の専門学校であったり、県内の高校の方に足を運んで、就職の説明会を実施しております」
また、先輩社員が入社したばかりの若手社員の悩み事を聞いて相談に乗る制度を設けるなど、離職対策にも力を入れています。
ANA沖縄空港上原力・人事チームリーダー「高校生の採用も積極的にしておりまして、やはり高校生というのは社会人にまだなり切れないというところがありまして。日曜日のある一定期間の固定化、おやすみを与えるであったりとか、約半年間は夜間、深夜の勤務をさせないで、日中の勤務をさせて、業務の方をしっかり覚えていただく」
まだまだ増加が見込まれている、沖縄の観光客。いま、観光業界全体が様々な知恵を絞って2021年度の1000万人達成に向けて動き始めています。
取材した草柳記者です。確かに街を歩いていても、観光客の増加を実感しますね?
草柳記者「はい、こちらをご覧ください。過去10年間の観光客数の推移です。2012年以降、毎年急激に伸び続けています。これに呼応して、有効求人倍率もうなぎのぼりとなっていて、観光客数と求人の相関関係が確認できます。」
それにしても、皆さん、いろんな手を打っているんですね。
草柳記者「実は今回ご紹介したケース以外にも、例えばバス会社では、繁忙期に本土から運転士に来てもらうケースや、反対に、人員に余裕がある時期にバスガイドさんがホテルの客室係をしたりと、業界内で仕事を補い合うケースも出てきています。いずれにしても、働き手を確保するために、いかに沖縄の観光業界を魅力ある職場にしていくかが大事で、賃金の大幅アップなど、ドラスティックな改革に取り組んでいきたいという声が聞かれました。」