シリーズ・つながる。きょうは防災の日、いざという時の障害者の避難について考えます。ここに2011年に起きた東日本大震災の時のショッキングな数字があります。
「4.3倍」
これは宮城県の沿岸部で「障害者」の方が一般の方よりも亡くなった割合が高いことを示す数字です。
震災時に逃げ遅れてしまった多くの障害者の姿、決して海に囲まれる沖縄も他人事とは言えません。きょうは「障害者」の災害時の避難を考えます。
全身の筋力が低下していく「脊髄性筋委縮性類似疾患」という難病を抱える湯地駿羽くん。その隣で24時間付き添う、母親の三代子さん。
駿羽くんは生後まもなく難病を診断され、11歳になる現在は人工呼吸器を使い生活しています。移動は全て車イス。医療機器もあるため、学校への登校など1つ1つの移動に時間がかかります。
湯地三代子さん「地震が来るってなった時には、実際にどこに避難したらいいのかわからないっていうのが一番不安」「駿羽の場合は人工呼吸器が必要で自発呼吸がない。普段はバッテリーで動いている。呼吸器とか栄養のポンプだったり。バッテリーが切れてしまった時にどうしたら良いのかっていうのがすごい不安になっています」
いざ地震など災害が起きた時を考えると息子を守れるのかという「不安」を感じている湯地さん。「障害」を持つ人々が災害時に逃げる方法はあるのでしょうか???
これは那覇市が策定している「災害時要援護者避難支援計画」。災害が発生、または想定されるときに必要な情報を迅速に把握し、支援が必要な「障害者」や「高齢者」などを救うための計画です。
計画では、災害が発生した際「災害時要援護者名簿」に基づき、那覇市が市内の支援が必要な方の情報を把握し、その情報を消防や警察、民生委員といった各組織へ伝達。その後「障害者」などの支援が必要な人々の避難誘導や安否確認を行うという仕組みになっています。
災害への備えは一見、万全のように見えます。
しかし、東日本大震災や熊本地震にボランティアとして活動した大城健さんはこう話します。
大城健さん「災害時には個人情報を無視して情報を出せるって言うんですけど、実際それが本当に出せたか。東日本大震災の時もうまく出せない。どこからが出すっていうのが取り決めが少なかったもので、そこで苦労して亡くなられた方も多かったと思う」「大規模災害が起きているんだけど、役場が持っている介護保険とか住民票で登録されている方々の情報をすぐに(関係機関に)出せないっていうので遅れがあったのかなと」
そこにあったのは「個人情報の壁」。那覇市の担当者も「いつから情報が出せるのか」という詳しい取り決めは検討中としています。
これは消防庁が昨年度まとめた「平常時における名簿情報の提供先」。沖縄県は災害時に備え、普段から支援が必要な方の情報を消防や民生委員、自主防災組織に提供している割合が全国平均を下回っています。障害者などの支援が必要な人々と各組織が繋がっていない現状が表れています。
大城さんは、こうした現状を地域や自治体で早急に変えていく必要があると訴えます。
大城さん「災害に見守りするネットワークづくりは必ず専門職だけじゃなく、自治会長だけじゃなくて、民生委員だけじゃなくて、隣近所、日頃からのつながりが無いと(安否確認は)難しいだろう」「どこどこの誰々さんが目に障害があるとか、耳に障害があるっていう方の把握していきながら、そういった方々を訓練に巻き込んでいく感じの体制づくりが必要になると思う」
在宅医療を行っている湯地さんも、早急な体制づくりを訴えます。
湯地さん「小児の在宅の家族は意外と孤立していて、地域に繋がっていない」「在宅移行するときにしっかり(地域に)つなげてほしい。じゃないと、ご近所さん巡りして『うちの子は障害を持ってて、何かあった時に迷惑かけるのでよろしくお願いします。何か手伝ってくださいね』とは自分からは言えない」
湯地さんは障害者の子どもを抱える親たちとボランティア団体を立ち上げ、避難における支援体制の整備を行政などに働きかける活動を行っています。
湯地さん「障害がある人たちが自分一人では逃げられない。(逃げるのを)諦めないといけない環境。そういう思いにならないように(地域の人たちと)繋がることで、そういう気持ちが失せていくと思う」
海に囲まれている沖縄は、より震災に過敏にならなくてはと思いますが、災害への備えが整っていないといえる今の沖縄。
いつ起きるかわからないのが災害であって「地域の人との繋がりを作ってほしい」「支援が必要な人々をも巻き込んだ訓練をしてほしい」という切実な声で動かなければ、起きてからでは遅いと言えます。