先月初旬に発生した台風一号。発生が、最も遅かった18年前に次いで、過去2番目の遅さを記録しました。暑い日が続き、ことしは台風がなかなか来ない状況となっています。
こうした気候の変化が今、県内の海に大きな異変を引き起こしています。石垣島の海を取材しました。
石垣島と西表島の間に広がる国内最大のサンゴ礁、石西礁湖。その多様性は、オーストラリアのグレートバリアリーフをも上回るとされています。今月1日、異変はすでにこの海を蝕み始めていました。
野島「こちらに見えるのが竹富島。そして奥に見えるのが石垣島です。この国内最大のサンゴ礁、石西礁湖。この海で、10年ぶりの大きな異変が起きようとしています」
水深、1メートル。サンゴの白化現象です。海底一面が、真っ白になっていました。白化は、サンゴに共生する茶褐色の「褐虫藻」が、海水温の高い状態が続くことなどで失われ、サンゴの骨格が透けて白く見える現象です。
この状態が、数週間から1カ月ほど続くとサンゴが死滅すると言われています。
上野光弘さん(石西礁湖サンゴ礁調査)「7月に入ってから、急激に白化現象、色が薄くなる現象が、一部の地域だけじゃなくて、石西礁湖全域で進行しつつある状況です。浅いところだけじゃなくて、水深が10メートル近い海域。これまでの白化現象が起きた年の中でも、それまで色が薄くならなかったサンゴの種類とか、海域でも薄くなってきているからですね。今年はちょっと深刻になるんじゃないかと予想しています。」
これは、環境省が石西礁湖内に設置している水温の観測ブイです。6月の下旬以降、サンゴが白化し始めるとされる30度を超え続けていることがわかります。
伊藤さん「本年度については、7月26日から調査を実施していて、8月1日現在においては、石西礁湖の南側を中心として11地点において調査を終了しています。調査を行った11地点については、約1割が完全に白化している状態で、約8割については、白化の進行が見られる状態となっています。」
この日は、既に死んだサンゴも確認できました。死んでしまうと、生き物として競争関係にある藻に覆われてしまうのです。環境省が、石西礁湖の中にある125の地点で、毎年実施している調査があります。
これは、海底をどれだけ生きたサンゴが占めているかを示すグラフです。30年以上前からのグラフを見ると、1998年と2007年に大規模な白化現象が起きたことで、サンゴが大きく減っていることが分かります。
大規模な白化が、9年に1度のサイクルで起きていることもわかります。さらに、調査を続けることで2007年の前には、一度回復しかけたものが、その後は、思うように回復しきれていないことも分かってきました。
中村崇 琉球大学理学部准教授「すでに温暖化と言うか、高い水温が起きる時期の前にすでに他の要因によってストレスを受けていると、やはり高温によるストレスで一気にやられてしまうと。映像を見る限り、ホワイトシンドロームのような症状を見てる群体もありますし、全て白化と言うわけではないかもしれないが、その既にやられているホワイトシンドロームだとか生物による食害ですね。そういったものの上に、この大規模白化が起きているというようなふうに見て取れるんじゃないかと思います」
回復しきれず、弱っているサンゴ礁に、さらに追い打ちをかけることになることしの白化現象。地元では、漁業や観光への影響を懸念する声があがります。
八重山漁協 砂川政信さん「サンゴが白化して死んで、死ぬと台風とかで崩れる。そうすると、隠れ場所、稚魚とか魚の。が無くなる。それがやっぱり影響」
八重山ダイビング協会 安谷屋正和さん「石垣はサンゴの種類は世界一と思っている。海で見せるものがなくなる。やっぱりサンゴなので、それが魅せられなくなるとやはり影響は大きいと思う。(海が)汚くなってくる。そうすると、やっぱりお客さんを案内しても、生きるサンゴを見たいとか、そうした声が上がるので、白化現象で見れなくなっているんですということになると、やはりお客さんが来なくなると思う。」
10年ぶりとなる大規模なサンゴの白化現象。海の中の異変は、日に日に深刻さを増しています。10日前でこの状態ですので、さらに被害は広がっているとみられています。
白化現象は、温暖化の影響と言われていますので、私たちには、節電などの取り組みも求められますが、地域としても、サンゴへのストレスを減らすために排水を流さない、オニヒトデを駆除するといった環境への配慮のほか、関心を持つことも求められていると思います。