大城実さん「人間、あの時怪獣になっていたんだと。僕と同じような少年がうまれる、そういうことがあってはいけないと思う。」
シリーズでお伝えしています、慰霊の日リポート「だから、私は語る」。「戦争は人間を、怪獣にする」。こう語る1人の男性がいます。この言葉の背景には、どんな思いがあるのか取材してきました。
大城実さん「1か月ぶりくらいやね。」
孫たちに囲まれ、幸せそうな笑顔を見せる、1人の男性。戦争で艦砲弾の破片が当たり、左足を失いました。
大城実さん「おじいちゃんの足は何で1本しかないの?っていう話から始まったんです。戦争怪獣の話覚えている?」
長女悠海さん「その話したような気がするんだよ。小さいときおじいちゃん生まれつき足がないと思っていて、怪獣とか誰かに食べられて(足が)なくなったとは思わなかったから、すごいびっくりした。」
大城実さん「怪獣の話をしたのはね、人間まともだと戦争できない、人殺したりできないと思って、だから怪獣という話をしたわけ」
「怪獣に足を食べられた。」数年前、孫に聞かれたとき、咄嗟にそう答えたという、大城実さん。71年前、10歳の少年でした。
大城実さん「座っていると今にも向こうから艦砲の弾、大砲の弾が飛んでくるような気がするんです。」
糸満市国吉。ここクニシビラの坂。71年前、今とは全く違う光景が広がっていました。
大城実さん「血が飛んで来たり、肉の塊が飛んで来たりした。けがをした人の叫び声にも耳を傾けませんでした。。助けようともしませんでした。」
大城実さん「(戦争は)人間の一番基本的な部分、感情をとっちゃうんですね。人間らしさを失う。人間が怪獣化していく」
当時10歳だった大城さんは、日本の兵隊に憧れ、国は正しい戦争をしていると教え込まれてきました。しかし・・
大城実さん「(日本は)人間ちっとも大事にしないんじゃないかと。悔しかったし、怒りを覚えたね。そういう思いをあれからずっと持っていて」
軍国主義教育を教え込まれた、大城さん。そんな大城さんにとって、去年大きな出来事がありました。
去年9月、安全保障関連法が成立。これにより、弾薬提供などの後方支援が可能になるほか、武器の使用基準も緩和されました。
大城実さん「問題解決のために武器を使おう、戦争をしようと。今の日本の政策そのものは、まさに戦争への準備。日本の状態、沖縄の状態みると、だまっていると認めることになるし。だまっているとまた戦争起こる。」
キリスト教学院大学で平和学を研究する大城さん。今月、1人の戦争体験者として、初めて学生に思いを伝えました。
大城実さん「国の政策を押し付けていることはたしか。それを見てそれは違うんじゃないか、おかしいんじゃないかと言い続けていくよりほかないんじゃないかと思います。」
戦争を起こすのは怪獣ではなく人間。だからこそ戦争は人間が止められると大城さんは信じています。
大城実さん「人間、人間でなくなって戦争をするわけだから、人間であり続けることはしていかなきゃいけないだろう。君が二十歳くらになったら兵隊にこいって言われるかもしれないよ?どうする?(孫:いやだ。怪獣にはなりたくない。)」