おととい、韓国のソウルから沖縄にやってきた1人の女性。
久田記者「各地旅行してるんだな、って感じですね」
たくさんのステッカーが貼られた旅行カバンが物語るように、旅行が趣味の主婦です。ですが、彼女が沖縄を訪れたのは、単なるプライベートな旅行ではありません。韓国人の観光客を誘致しようという複数の県内企業が、彼女を招待したのです。きのう訪ねたのは、那覇市にある肉料理の高級店、「紺」。
通訳「いつもお出しされてる形と同じ状態で出して頂きたいので、それでお願いします。」
店に入るやいなや、写真を撮って撮って、撮りまくります。実は彼女、旅行先のグルメ情報などを個人ブログで発信し、多くの読者を持つ、「パワーブロガー」なのです。
店員「お肉お持ちしました、おきなわ和牛です」
彼女のブログをチェックする人は、若い女性を中心に1日およそ20000人にも上るといいます。こうしたブロガーの起用は、その影響力を考慮しただけではなく、韓国独自の事情も踏まえた合理的な戦略です。
通訳「韓国のポータルサイトで、韓国語で『福岡グルメ』って検索したら、写真の次に、これ全部ブログの記事なんですけど、1位2位ですぐ出てくるぐらいの人気が」
韓国では、インターネットで情報を検索すると、企業や店舗のサイトよりも上位に、検索ワードにあてはまるブログが表示されるようになっているのです。それはなぜなのでしょうか。
株式会社ホスピタブル松清一平代表取締役「企業や店舗側が、売りたい商品とか出したいサービスというのを韓国語で仮に(広告)配信したとしても、利用した人の実体験とか感想が載ってない限りは、購入には至らないですね」
日本とは異なり、実体験にもとづく情報を重視する国民性を反映した韓国のインターネット事情。旅行を計画する段階で店舗の情報に触れ、選んでもらうには、ブログが最も適しているのです。
株式会社碧西里弘一代表取締役「旅行に来るときはやっぱり食を求めてきますよね。こういうお店もあるんだよ、こういう会社もあるんだよということを知ってもらいたい、ということなんですね」
とはいえ、ブロガーの多くは、企業側の目線で宣伝を行っているわけではなく、消費者の目線でサービスを体験し、お店にアドバイスもします。
通訳「韓国では鶏肉のお刺身みたいのはあまり食べないので、ブロガーさんたちは食べるけども一般の方はそんなに好きじゃないかもしれない」
宣伝と受け取られると、読者が離れてしまうのです。今回のブロガーも、料理の提供は受けたものの、店側からブログ記事の掲載料金を取ることはなく、あくまで消費者の目線での体験談を掲載することに徹しています。
変わってこちらは那覇空港近くにあるレンタカー会社。この会社でも去年、韓国人ブロガーを招き、サービスを体験してもらいました。借りるまでの手続きはスムーズか、韓国人でも困らないか、などの不安を解消することが狙いです。
久田記者「沖縄に来るとき前もって情報はどうやって調べたんですか?」
韓国人女性客「インターネットとブログで調べてきました」
この店舗では、外国人観光客の急増を受け、去年、全国の系列店のなかで、初めて売上1位を記録。さらなる成長には、レンタカー旅行の多い韓国人客の利用拡大が欠かせないとの判断から、韓国人のスタッフも初めて採用しました。
タイムズモビリティネットワークス中村貞一さん「思った以上に多くの方々が実際に見られて、ブログ掲載を通して当社を選んでいただいたと」
去年1年間に沖縄を訪れた韓国人観光客はおよそ30万人と過去最多。個人旅行が中心の韓国人客は、効果的なPR次第で取り込める余地も大きいとみられ、韓国の消費者の特徴を踏まえた誘致は今後広がりを見せそうです。