今日の特集は「インクルーシブ教育」について考えます。学校教育基本法には、障害を持つ子供たちが、その種別や度合い、そして子供の発達に応じて教育を受けることができる「特別支援学校」といわゆる普通学校とがあります。
しかし、社会のバリアフリー化が進む中、障害のあるなしに関わらず、同じ学校で学ぶことで、双方の子どもたちの可能性が伸びるという一面や、障碍者への偏見をなくす、あるいは、社会性も育まれるという相乗効果も期待されています。
そのことから、沖縄でも馬天小学校の分教室のように、インクルーシブ教育のモデル校としても取り組みも始まりました。ただ、これまでにも学校や教育委員会の裁量で、重度の障害を抱える子が普通学校に通っているケースも既にあります。
この春、障害を持ちながらも普通学校を無事卒業した男の子の姿を通して、インクルーシブ教育の可能性を考えます。
重度の知的障害と自閉症を持つ仲村伊織くん。起きている間は1対1の介助が必要です。6年前、「地域の子ども達と成長させたい」と両親は地元の公立小学校に通わせる決意をしました。
母・美和さん「重度の知的障害の子が普通小学校に行くのは、子どものためにもよくないし、今の学校教育の制度の中では不可能に近いことです、ってどこへ行ってもはっきり言われました。」
教育委員会や学校と何度もサポート態勢を話し合い入学した伊織くん。この春、同級生と共に無事、6年間の小学校生活を終えました。
母・美和さん「(卒業)式は緊張しているから、独特の雰囲気に飲まれているのと、本人なりに緊張していたのかなと。」
卒業式、会場の緊張を感じたのか落ち着かない伊織くん。支援員に何度も助けを求めます。そして、卒業証書授与、伊織くんの番が近づきます。両親が心配して見守る中、同級生がそっと肩を抱いて舞台へ向かいました。
父・晃さん「友達と達と一緒に行った時だけはぐっときたかな、やっぱり。同級生というか、支援員ではなく、友達に支えられているというのが改めて実感わきました。卒業式0は。」
同級生「伊織さんの将来の夢は、世界中の人と出会いエイサーを見てもらうことです。」
1年前にに比べ、身長も伸び、言葉も増えた伊織くん。実は、この4月から、みんなと同じ公立中学校への入学が決まりました。バスでの通学となるため、地域の人や保護者など多くの人が話し合いを重ねたといいます。
母・美和さん「ただ一人の子どもの、15分バスに乗ることについてなんですけど、2時間くらいうーんって考えて、これは本当にありがたい。」
6年間、同じ学校で過ごした同級生たちは、伊織くんの存在が決して特別なものではなく、1人の仲間として接しています。
父・晃さん「とてもいい雰囲気で、その中に伊織がぽつんと普通にいるというのが、自分たちとしては6年間頑張ってきてよかったねと感じました。」
障害のあるなしに関わらず、同じように学校生活を送り、地域の同級生と大人になること。それは両親が伊織くんのために願ったことでした。
父・晃さん「障害を持った子の親はみんなそうだと思うのですが、この子より一日でも長生きしてやろうって・・・。今まで真っ暗な道手探りで歩いてきたんですけど、今の彼の将来に光が見えています。」
母・美和さん「親の役割というのは、介護者やマネージャーではなくて、この子を支えてくれる応援団をいっぱい見つけるのが、親にできる最大のことかなと。」
障害がある人ない人も共に学ぶインクルーシブ教育、6年間で築かれた心のバリアフリーは偏見のない、共生社会への大きな一歩となっています。
同級生の仲程将太郎くん「(Q.同じ中学校に行くんだよね?)楽しみ。(Q.小学校も一緒で中学校も一緒?)できれば高校も一緒に行きたいな。いおり友達増えるね!」
障害を持つ子どもの状況によっては、特別支援学校での教育のほうがより専門性もあり、効果的だという考え方があることはもちろんです。
今回紹介した伊織くんの場合、常に専属のヘルパーが必要で、小学校への入学まではとても大変だったそうです。
ただこの6年間で築いた地域や同級生との絆というのは、この経験がなかったら生まれていなかったというのも事実です。