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Qプラスリポートです。与那国島への自衛隊配備計画が進められるなか、ある映像作家が島の映画を制作し、このほど完成しました。映画には島を二分する配備計画への賛成・反対の声とともに地方が抱える問題と、そのなかで揺れる人々の心情が描かれていました。棚原記者です。

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先月、およそ300人が詰めかけた映画の完成披露試写会がありました。映画の舞台は与那国島。尖閣問題などを背景に、政府が自衛隊の沿岸監視部隊を配備しようとしている国境の島です。

「今船が着いてさ。兄ちゃんこれ(ジュース缶)あげる」

映画には、あえてナレーションやBGMを入れず、観客たちが自由に、映像や登場人物の言葉について考えられるようにしています。映画をつくったのは、鎌倉に住む映像作家、土井鮎太(どい・あゆた)さん。旅行をきっかけに、2011年から3年間、与那国島を見つめてきました。

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土井さん「与那国島の現状をいろんな人が知ってほしいなというのがまずあって。今の与那国って自衛隊の基地が入ろうとしている過渡期じゃないですか。やっぱりかけがえのない時代なのかなと思って。」

映画の序盤、カメラに映るのは、住民たちが島の繁栄を祈り25日間にも渡って行う儀式や島の美しい風景。しかし、やがて映像には、自衛隊の配備をめぐり住民たちが二分されていくさまが色濃く描き出されていくのです。去年8月、島では自衛隊の受け入れを争点にした町長選挙が行われていました。

反対する住民「基地を持ってくるということは戦争を持ってくるという意味だから、反対しないといけない」

賛成する住民「ここらへんの移住者は何でも反対反対言ってるけど、ちゃんと正しい事言わないといけないよ」

土井さん「賛成派も反対派も同じように島を思ってやってるんですけど…。それがちゃんと話し合いがなされて、深く考えられているかどうかはわかんないですけどね」

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投票率は実に95%、島をあげての戦いは賛成派が勝利したものの、その差はわずか47票という僅差。住民たちが二分される背景には、島が抱える苦しい事情があります。

女子生徒「高校からは一人だけの生活が始まりますが、与那国のことは忘れず、毎日笑顔で頑張りたいと思っています」

高校のない与那国では、子どもたちは中学を卒業すると島を出ていき、戻って来るのはごくわずか。戦後まもなく台湾や本土との密貿易で栄え、一時は2万人とも3万人ともいわれた人口も、今では1500人あまりです。

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青年会メンバー「島はもうだめです。落ちていってる状態です。だから苦肉の策として自衛隊入れて、ふわっと浮かすという感じじゃないですか。俺の感覚からしたら。落ちてってる速度を弱めつつちょっとふわっと上げようというのが自衛隊誘致の話なんですよ。」

カメラは、防衛省の職員が住民たちに呼びかけるこんなシーンも捉えていました。

防衛省の職員「息子さんが自衛隊に入っているから。もし駐屯地ができたら呼んで、今からの多分高校は本島とか石垣とか行くんでしょうけど、就職を地元でできるというのをしてもらえば絶対いいと思うんですよ。それの先駆けだと思う」

ことし4月、政府は自衛隊施設の建設に向けた記念式典を開催。自衛隊を受け入れるのかどうか、小さな島を分断したまま、巨大な国防政策を見切り発車させました。

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シュプレヒコールノイズ「町民を分断するな」「もっと話し合って。ここに住んでるのは私たち」「与那国は怒っているぞ」

土井さん「今までの国防の為だけの自衛隊ではなくなってきそうでもあるんで、日本各地に配備される状況になるというのは、やっぱり怖いですよね。それで過疎化食い止める手段になりうるのかというのも疑問に思いますしね。投票新たにやるとか、説明会をもっとちゃんとやってほしいという反対派の動きもまだあるんで、この映画が多少は励みになればいいとは思いますけどね。このまま基地がなし崩し的に配備されて禍根が残るのが、島にとって一番良くないと思うんですよね。」

深刻な過疎など、地方が抱える問題を解決するかのように謳う自衛隊の配備。しかし、基地をめぐり亀裂を深める島の日々を記録した映画は、私たちに基地というものが地域社会に何をもたらすのかということを静かに問いかけています。

映画「はての島のまつりごと」は、今後県内各地での上映会を予定しています。詳細はこちらのホームページでご覧になれます。

www.hatenoshima.com