ちょうど1年前、自らの性暴力被害を公表し、被害者のための支援センター設立を求める活動を始めた2人の女性がいます。その声は1年で県を大きく動かすこととなりました。彼女たちの1年の思いを取材しました。
金城葉子共同代表「今、沖縄にはたくさんの強姦被害者、あるいは難は逃れたけど心や体が傷ついてしまった性暴力被害者が男女年齢を問わず数多く存在しています。早急なセンターの設立を望みます」
10月28日、1年間の活動で得た1万623筆の署名を県へ提出した「ワンストップ支援センターの設立を強く望む会」。
ワンストップ支援センターとは性犯罪・性暴力被害者が被害後に1ヵ所で産婦人科医療やカウンセリング、そして警察への届け出や法的支援までを受けられる場所で、2011年から内閣府が全国の自治体に設置を進めています。
センター設立を求める活動は今から1年前に始まりました。
田中真生・共同代表「何度も話し合いました何度も話し合って娘と公表することを決めました」
『娘が義理の父親に性暴力を受け妊娠した』という衝撃の事実を公表した田中さん。そして、高校生の時に米兵から性暴力を受け、今もそのトラウマと闘っていることを告白した金城さん。
自らの被害を公表してまでセンターの設置を求めたわけ。それは「性被害者が声を上げられない社会を変えたい」その思いからでした。
この1年間、望む会はどんなセンターが望ましいのか。県、県民に対し訴えるべく、全国から専門家を招き、何度もシンポジウムを開いてきました。
田中さん「勉強していくうち、当事者の視点に立ったセンターは素晴らしい。沖縄にも作りたい、あったらいいなと」
大城玲子・県生活統括官「今回で内容を取りまとめたいと思います」
一方、県では来年度設置を目標に、医療関係者や警察、そしてこれまで相談支援を行なってきた女性団体などを集めて、5回に渡って検討会議を開きました。最後の会議でまとめられた県への提言。
大城玲子県生活統括官「心身のダメージを受けている被害者に、ワンストップ性を発揮してと考えると、病院内に設置する病院拠点型が望ましいと言う方向性を確認しております。被害発生の時間が予測できないことと直後の対応が重要であるとのことから、24時間365日の稼働を目指すことが望ましいのではないかとなりました」
公費で24時間365日体制の病院拠点型という全国にないセンターの形。県の方向性は、ほぼ田中さんたちが求めてきたものでした。
竹下小夜子・精神科医師「最大のネックは、産婦人科医師及び支援員の確保。それを十分な人数を確保して、安定的に維持していけるだけの財政的な裏付け」
設立へ向けて開かれたシンポジウムでは、各方面から多くの意見が出されました。
嘉陽真美産婦人科医師「ワンストップ支援センターを作るまでには複数の専門的な研修を終えた医師がかかわることが必要」
矢野恵美准教授「専門家機関の中に法曹の人たちを入れてほしい。みんなに教育を受けてほしい」
課題も数多く指摘されていますが、田中さんたちが闘ってきたこの1年、その努力が今、実を結ぼうとしています。
田中さん「1年しか経っていないのにここまでこれた。本当にみなさんのおかげだと思っています」
性暴力被害者の8割が身内からの被害という統計があります。身近なところに加害者がいるという事実、そのために声を上げられない多くの被害者がいるのです。
その被害者に「あなたは悪くない」。そういって上げられる社会を求めて、田中さんたちの活動は続きます。
この1年、取材を続けてきた秋山記者です。県の方向性が決まったわけですが、評価できるものなのでしょうか?
秋山記者「こちらに県の提言をまとめました。現在、8都道府県にワンストップ支援センターがありますが、県が公費で運営する24時間体制のセンターはありません。ですから県の決断というものを評価したいのと同時に、田中さん・金城さんたちの声が届いたと言えます」
これからの課題はなんでしょうか?
秋山記者「まず、拠点病院となる総合病院がまだ決まっていません。そして、産婦人科医不足の中で24時間体制をどう構築していくかまた、支援員の確保と育成、もちろん財源も大きな課題です。1年、取材をして改めて思うのは、センター設置と同時に『性被害者が声を上げられる社会にしていくこと』。これこそが性暴力、性犯罪の抑制に繋がるのではないかと思いました」