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作家・池上永一さんに聞く 「琉球」から「沖縄」に伝えること

那覇市生まれの作家・池上永一さんがベストセラー小説となった「テンペスト」に続き、自身2作目となる沖縄の歴史小説を出版しました。池上さんがこの小説にどんな思いを込めたのか、伺いました。

「テンペスト」の著者、池上永一さんの新作小説「黙示録」。舞台は、琉球が日中両属という形で王国として成り立っていた時代。病気の母を抱え、あすの食い扶持にも困っていた主人公・蘇了泉は琉球舞踊の世界に飛び込み、その才能を開花させていく。一方、当時の王、尚敬王の後見役である蔡温は‘琉球王国’という主体を世界に示すため、舞踊をはじめ芸能に重きをおく方針を示す。今に伝わる、多くの芸能が生まれた時代となった。

作家・池上永一さんに聞く 「琉球」から「沖縄」に伝えること

池上永一さん「この時代に琉球の今の沖縄らしさというものが全部出てくる、美しいものがたくさん出てくるんです。本当に昔の沖縄の人たちは、真面目で誠実にテーマ(課題)をこなしていったんだなって思いました。その文化の恩恵を21世紀の私たちが受けている。400年たっても枯れない美しさに囲まれているというのは、彼らがどれだけ苦しい思いをしたか」

病気の母のため、そして自分も生きるために踊りの道を究めようとする了泉。ライバル・雲胡との壮絶な競争をはじめ、了泉は天国を見ればすぐさま地獄を見るという波乱万丈な人生を送ることとなる。

池上さんはこれは現代の投影だと言います。

池上永一さん「やっぱり時代物を書いていたとしても、僕は2013年に生きているんです。不安とともにある時代だと思う、今はね。その時代の空気を纏って歴史物の小説として表しているので、了泉のように地獄に落ちても、また這い上がって意義ある人生を生きたいってみんなが思っているので、了泉の人生を読みながらね『僕もこう生きよう』って思ってくれたらすごく嬉しいです」

池上永一さん「蔡温の生きていた時代も現代の沖縄も、この地政学的位置づけというのはテーマが同じなんです。自分たちの主体を示さないと存在できないんです。琉球、よく沖縄の心、島の心って言われるんですけど、それが相手に伝わりやすい形ってのがあるので、それを受け止めやすい形っていう21世紀のやり方を考えなきゃいけない。21世紀に生きる私たち、ウチナーンチュが何か生み出せるもの、美しいものがあるんじゃないかと、そう思っています」

池上さんは前作の「テンペスト」に勝る強い思いでこの小説を書き上げたということです。時には70時間眠らずに没頭して書いていたこともあったそうです。今回の力作も読み応えがありそうです。