本田克久教授「ベトナムで撒かれたものも農薬なんです。245Tから来たダイオキシン汚染の典型。他ではあまりない。」
こう語るのはダイオキシンの専門家でベトナムでの調査経験を持つ愛媛大学農学部の本田克久教授です。本田教授は沖縄市のサッカー場から出てきたドラム缶にベトナムで使ったのと同じ「枯れ葉剤も含まれていた可能性がある」との考えを示しました。
ベトナム戦争当時、アメリカ軍が大量に撒き、今も300万人以上が病気や障害などに苦しめられている枯れ葉剤。日米両政府が沖縄にあったことを認めない中、沖縄市の調査結果は大きな波紋を広げています。
土の中から掘り出されたドラム缶は22本。調べたところ2本から猛毒のダイオキシン類が環境基準を超えて検出されこのうち1本は基準値の8.4倍という高い数値でした。
またベトナム戦争で使われた枯れ葉剤と同じ245Tという物質が18本から検出され、ドラム缶周辺の水からは環境基準の280倍ものダイオキシン類が検出されています。
本田教授「沖縄のいわゆる枯れ葉剤を持ち込んだんじゃないかという噂話から始まって色々なことを証言されているのを聞いていました。何回か沖縄に行って調べたんだけど、今回のようにズバリドラム缶が見つかり、且つ、付着物の土壌から高濃、度のダイオキシンが実際に検出されたということですよね。」
本田教授が特に注目したデータがあります。2378TCDDという物質。ダイオキシン類の中でも最も毒性が強く、ベトナムで撒かれた枯れ葉剤に含まれていたものです。ドラム缶のダイオキシン類を調べた結果、10本でこの2378TCDDが、高い濃度で含まれていたことがわかりました。
本田教授はこうした状況がある地域と似ていると言います。ベトナム戦争でアメリカが使ったダナン空軍基地。基地の近くの農地は一般的な農薬に含まれるダイオキシンと基地内の枯れ葉剤に由来したダイオキシンの両方に汚染されていてそれが沖縄市の状況と似ていると言うのです。
本田教授「本土と言いますか、色々な汚染地がありますけれども、どこをとってみても2378TCDDの割合が50パーセントとか70パーセントを占めるというのは私は聞いたことがないですね。ありません。今度沖縄で見つかったサッカー場の汚染というのはまさに、我々がベトナムで調べた水田に似ている。農薬と枯れ葉剤の汚染が入り混じった汚染のパターンに非常によく似ているんですよね。」
子どもたちが元気に走り回っていたサッカー場。なぜこのような汚染物が出てきたのか。ベトナム戦争当時嘉手納基地で働いていた男性は気になる証言をしています。
宮城 貞雄さん「向こうは航空隊の施設から離れた、南側の雑草の生えた部落の近い所の整備されていない所の草むらを利用したジャンクヤードみたいなの。廃品とか使い残しの物質を貯蔵してあったということですからキレイなのじゃなくて、使い捨て、半分曲がったような感じ。倒されてあちこちに散らばっている。小さい缶、普通のドラム缶、大中小雑に捨てるように置かれていた。」
深まる枯れ葉剤の疑惑。本田教授はより詳細な調査が必要だと指摘しています。
本田教授「枯れ葉剤というのはベトナムで使用した除草剤全部を枯れ葉剤と呼んでいると。農薬だから大丈夫、枯れ葉剤だからどうとかいうのは全くおかしいことでできるだけ早急に埋めたらしい場所を掘り起こすと言いますか、再調査、詳細な調査をすることによって、汚染の範囲を確定して、それをできるだけ早く適切な処理をしていくこと。それ以外無いんじゃないかな。」
返還されておよそ26年経て土の中から姿を現したアメリカ軍の廃棄物。今回の問題は広大なアメリカ軍基地が返還される前に私たちがアメリカ軍基地の汚染にどう対応し、解決していくかが問われています。