きょうの特集は、先月から実施された生活保護の引き下げについて。
今後3年間で段階的に、基準額の1割が削減されるといわれ、受給者を中心に、県内でも反対集会などが開かれていますが、実はその影響が及ぶ範囲は、受給者に限った話ではないんです。
シングルマザー「今月から保護費が月に6000円の減額。今まで家族で節約しながら生活してきて、贅沢する余裕など全くありませんでした。物価は上がる一方で、苦しい生活をさらに切り詰めなければなりません」
先月、那覇市で開かれた市民集会。生活保護を受給している当事者や支援団体などが集まり、引き下げ反対を訴えました。
去年、政権に返り咲いた自民党。公約のひとつに掲げていたのが、「保護費の原則1割カット」でした。
背景には、6月には過去最多を記録した受給世帯の数と巨額の負担金。
こうした中、政府は先月、生活保護を受けていない一般の低所得世帯とのバランスをとるなどとして、生活保護基準の引き下げを始めたのです。
受給夫婦「きついですね。何もかも引き下げられたら、もう生活やっていけるかなって。自信も出なくなるね。」
糸満市のある受給世帯。3歳から19歳までの4人の子どもと40代の夫婦の6人家族。
夫婦は、病気や障害といった事情で、10年ほど前から生活保護を受けています。
今回引き下げられたのは、保護費の中の「生活扶助」という部分。この世帯ではこれまで満額で、およそ21万3000円でした。
ここから働いた分の収入などが引かれ、実際に受け取る額は毎月異なりますが、今回の引き下げで、基準額はおよそ4000円減額されました。
現状では1.8%の下げ幅にとどまっていますが、3年後には6.1%の減額になることが想定されています。
受給夫婦「食べ物の引き締めですね。安いものから探して買う感じで、それしかないですね。(子どもと)お金の話はしないですね。ないようにしてますね。長女分かってるのか心配はするんですけど。」
こうした受給世帯の数は、県内で2万3000世帯あまり。県民のおよそ40人に1人が、生活保護を受けています。
政府の試算では、今回引き下げの対象となるのは、受給世帯の96%。特に下げ幅が大きいのは、子どもが多い世帯だといわれています。
県担当者「こうした試算で一番影響が高くなる世帯は、夫婦と子2人で40代夫婦と小中学生ということで、前の7月と比べて6070円の差が出てくるだろうと。」
県内でも影響が広がりつつある今回の問題。しかし、国が主体の生活保護事業に、県ができることは限られているのが現状です。
県担当者「県としてじゃあ何ができるかというのは・・・特にないというか。それは国の対応を見守っていくというか、注視していこうと思っています。はい。」
一方、受給者からは、保護費が減っていることがわかりにくいという声が聞かれます。
受給夫婦「全然未だにわかりません。嫌ですね。内容分かって納得するんだったらいいけど、下げる下げるで。」
引下げから1カ月。実態が見えにくいまま進む削減に、受給者の不安は募ります。
さらに、引き下げの影響が及ぶ可能性は、こうした受給世帯に限った話ではありません。
これは、厚生労働省が公表した資料。生活保護の基準変更に伴うほかの生活支援制度に対する対応方針が示されています。
実は、ほかの多くの制度の基準額とも連動している生活保護。
住民税の非課税限度額や国民年金保険料免除の基準額など、その影響が及ぶ範囲はおよそ40項目。
このため、一般世帯などにとっても、「住民税が増税され、国民年金保険料が免除されない」といったことが起こりうるのです。
しかも、この資料には記されていませんが、生活保護基準の引き下げは、最低賃金の引き下げという重大な問題につながる可能性も指摘されています。
受給夫婦「全体的にのしかかってくるんじゃないですか。年金とかも。正直考えたくもないですね。」
国民全体の暮らしに関わる生活保護の引き下げ問題。その波紋は、私たちすべてに広がろうとしています。
今回の問題をめぐっては、現在全国で、生活保護の受給者が国に対して、不服申し立てをする「審査請求」という手続きを行う動きが活発化しています。
ほかのさまざまな生活支援制度への影響など、今後については、まだ不透明な要素も多いのが現状ですが、受給者だけではなく、国民全体が当事者だという意識を持つことが必要ではないでしょうか。