演芸集団「FEC」が毎年この時期に上演している「お笑い米軍基地」。沖縄本島縦断の舞台が先週からスタートしました。笑いを手段に彼らは何を伝えようとしているのか、取材しました。
毎年、慰霊の日に合わせて公演している「お笑い米軍基地」。基地や戦争の問題をタブー視することなく、様々な問題を切り取り笑いに変える舞台が人気です。
この一年で話題になったニュースなどが題材ですべて新作のコントです。コントの一つは、オスプレイが子ども電話相談室に相談に来るという設定。
『オスプレイさん、今日はどういったご相談ですか?』「あのー、僕嫌われています?」『嫌われているさ』「あいやー、やっぱりそうなんだー」
オスプレイの相談に専門家の答えは『電信柱にぷすっと刺さってみるわけよ』「僕が刺さるんですか?」『それでね、その大きなプロペラを回して電気作ってごらんすぐ人気者さー』
反発の大きいオスプレイを笑いに変えていました。
脚本・演出を手掛ける小波津正光さん。今年は、サンフランシスコ講和条約の発効した4月28日に開かれた政府主催の「主権回復の日式典」と「沖縄の抗議集会」をコントで対比しました。
沖縄の集会では抗議集会に慣れた女性たちが、趣旨を理解できないまま参加。『ダイエットしたのに5キロ太っている。がってぃんならん』『最近、くしゃみしたらちょっとおしっこもでる。がってぃんならん』
政府の式典では、式典の狙いをおもしろおかしく風刺しました。『なんで今年、やろうと思ったんですか?』「まっ、なんでと言われましても、最近中国や韓国ともごちゃごちゃしておりますし、そろそろ自分たちの軍隊を持ちたいなといいますか。ようするに美しい国を取り戻そうとそう思っております」
今年は、小波津さんにとってどうしても取り上げたいテーマがありました。沖縄戦の体験が心の傷として残る戦争PTSDです。原因不明の膝の痛みに苦しむウシさん、戦時中に死体を踏んだ感触が今でも忘れられず心に傷を負っているのです。
『毎日笑っていたら嫌な記憶もなくなると信じて生きてきたさー。やしがよー、あの戦争は私をいつまでたっても私を苦しめるさー」
劇では戦後68年がたっても、乗り切ることの難しいつらさがあることを描いています。
『笑いは戦には勝てないよー』
それでも、小波津さんが解決策として脚本に書き込んだのは、笑いでした。戦争で亡くなった人をいつまでも忘れず、身近に感じる提案がこのセリフには込められていました。
「沖縄戦で亡くなった方々を悲しむだけじゃなくて、そばに感じて一緒に楽しむことがあってもいいんじゃないでしょうか?ということで、みんなで考えたのがお笑い慰霊の日」
若い世代が戦争を忘れず、継承する意思を示すこと。それこそが戦争体験者の傷を癒すのではないかと小波津さんは信じています。
小波津さん「戦争PTSDのおじいちゃん、おばあちゃんに対して、僕らはどうしたらいいのか?全く正解は出てないけどでも、おじいちゃん、おばあちゃんのことを僕らが楽しますことができないかな?つらい思いをしても笑いを提供できないか?それで少しでもおじいちゃんおばあちゃんが前に進めたり長生きしてくれたらそれでいいんじゃないか」
「おばー、長生きしれよ。万歳」
来場者「一つ一つきちっと考えられて面白かったですよ。来てよかったー」「基地問題とか、オスプレイとかそういうところが面白くて勉強になりました」「そういった言葉(戦争PTSD)も初めて舞台で知ったので、あえてこういった難しい話題を笑いに捉えていくのが、まーちゃんさんすごいなと思いました」
小波津さん「僕らのお笑い米軍基地を見るよりも、時間があれば6月23日にそういう戦跡とか平和の礎とか訪れて、おじいちゃん、おばあちゃんの姿を見ていただきたいと思います」