Qリポートです。きょうは県産品を海外へ売り出す取り組みを紹介していきます。
那覇空港と日本・アジアの各主要都市を結ぶ沖縄貨物ハブの開業から去年で3年が経ちました。しかし、この貨物ハブを利用した県内の取扱量は去年4月~12月までで、およそ178トン。全体取扱量は10万5000トンに比べると全体の0.2%ほどです。
ここ数年、アジア市場へ県産品の販路拡大を目指す様々な取り組みが進んでいますが、その課題も見えてきました。
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えんグループ 又吉真由美代表「私が香港にいったのは20年前なんですけども、沖縄の県産品っていっさいなかったんじゃないかな。」
香港を中心にアジアで沖縄料理店などを経営するえんグループ代表の又吉真由美さん。アジアに直行する沖縄貨物ハブができる以前の県産品の輸出について、こんな苦労話をしてくれました。
えんグループ 又吉真由美代表「商品の劣化や時間的な部分、破損などもあったり、特に海ぶどうは温度変化に敏感なので冬の関空を経由すると着いたときには紐みたいになっていたとか。」
その苦労が解消されるほど、今、沖縄の物流インフラは急速にすすんでいます。
えんグループ 又吉真由美代表「インフラもかなり“沖縄からアジアへ”という方向に進んでいると思います。」
アジアへの販路拡大に向け絶好のチャンスを向かえる沖縄。海外へ県産品の卸も行うえんグループではこの日、来月の香港・マカオへの商談会にむけた説明会を開催しました。
海外への販路拡大については、県でも一括交付金などで支援を行うなどオール沖縄での取り組みが進んでいます。
しかし説明会では、マカオのスーパーに開設された「美ら島マート」について、こんな厳しい指摘もありました。
えんグループ ピーター・ン オーナー「ちょっと状況的には思ったよりも(美ら島マートの)モノが動かない、客は棚に置いてある商品のことがわからない、どうやって食べるかわからない。」
県産品のアジアでの認知度はまだ高いとは言えません。3年前から国内外の商談会の企画する沖縄銀行の又吉司さんはこう語ります。
沖縄銀行事業戦略支援室 又吉司上席調査役「沖縄をどうブランディングするかっていうのはとても課題だと思います。向こう(海外)にいけば他府県がライバル、世界がライバルだと思うんです。沖縄の商品にヘルシーだねとか歴史を感じたりとか背景をつけてセットで売らないと、なんでこれが高いのかとか、なんでこういう売り方をするのとか、“意味”をわからせないと。」
沖縄の課題の内的要因として上げられたのはこの4つです。現地に直接行って交渉する県内企業が少ないため、消費者と生産者の情報が不足し、商品開発に課題が生じる。原価の構成や、高い価格設定の理由が現地の人には不明瞭という課題が沖縄には存在します。
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まだ県産品は、整備が進む沖縄の物流インフラを使いこなせていないという印象を受けますね。
はい、そもそも現地に直接行ってマーケット調査を行ったり、現地企業に商品の価格や内容について十分に説明する企業が少ないということなんです。
一括交付金などもつかって県でも支援が進んでいるだけに、このチャンスを生かさないのはもったい気がします。
そうですね、ただこれらの課題を克服し、アジアで売り上げをのばしている県内企業もいます。このあとは、現地の平均価格の2倍の値段でも売り上げをのばしている企業を紹介します。
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去年9月、香港で開催されたある商談会。沖縄県産の精肉をつかった加工品のブースに人だかりができました。受けたのは、香港より精肉の構成比率が高い、肉々しい食感です。
那覇ミート 松田浩一営業部長「値段的にも多分倍近くするんじゃないかという感触ですが、ただ香港の人は美味しいものがすきだし、一回美味しいものを食べていただければリピーターはついてくるのではないかと」
去年10月から香港・マカオに7種類の加工品と精肉を出荷する那覇ミート、香港市場での売れ行きは好調です。人口700万人以上、年間4000万人の観光客が訪れる香港。那覇ミートでは去年6月に現地を視察し海外展開の決意を固めました。
那覇ミート 松田浩一営業部長「初めは(香港を説明する)そういう文書でおきぎんのリポートを見てそうなんだ、へーたいしたもんだねって思ったんだけど、実際自分が行くと、ああこんなにすごいんだって目の当りにできたので、そうしたらああこういう商品も売れるんじゃないかとか、僕は全然わからなかったのでまずは行ってみようってことで、それが結構良かったのかなって思ってますね。」
香港進出にあたり商品にいくつかの改善を行いました。こちらは焼かずに生で食べることを薦めているハム商品。
那覇ミート 松田浩一営業部長「(香港では)ハムを生で食べる習慣がないんですよ、どうしても焼いてしまうので。」
調理法がすぐイメージできるように、サンドイッチやサラダなどの写真シールを張りました。沖縄で20年間同じデザインで販売するソーセージステーキも、沖縄をイメージしやすい守礼の門のデザインに変更。沖縄県産であることや調理法のわかりやすさを香港市場では重視しています。
沖縄銀行事業戦略支援室 又吉司上席調査役「このマーケットに対して自分ができることはなんなのかっていうことを企業自身が明確にしていかないと、売れるものも売れないとおもいます」
那覇ミートでは現地のニーズを把握するため、月に1度の香港訪問を欠かしません。
そして、沖縄の貨物ハブの優位性も大きく活用しています。今回出荷する荷物は11ケース、それほど多いように思えませんが、出荷して翌日早朝には到着するため、買い手は必要な量だけを発注することをできる、在庫をもつリスクがないんです。
発注する現地企業にとってスピーディな発送は、新鮮なものを必要な量だけをいつでも発注することができ在庫を持つ必要がない、在庫保存のための倉庫がいらないのです。
この日も沖縄からアジアへ、県産品が飛び立ちました。
那覇ミート 松田浩一営業部長「アジアのマーケットは本当に大きい、本当に大切なパートナーとしてずっと付き合えるような商売を続けていきたいと思っています。」