性暴力の被害にあった人たちをどう支えるか。去年、市民らの強い要望を受け県も支援センター設置に向け動き出しました。その現状と課題を考えます。
去年、立て続けに公となったアメリカ兵による女性への暴行事件。県民の怒りが頂点に達していた同じ時期、ある衝撃の記事が新聞に掲載されました。
高校生の時、友人宅に遊びに行った帰り、その家族から送ってもらうよう紹介されたアメリカ兵に、車中で首を絞められ襲われそうになった経験を実名で告白した金城葉子さん。
金城葉子さん「自分で何が起こったかよくわからなくて。でも絶対に人に言ってはいけない、自分のせいだ。自分さえ忘れればもう事件はそれで終わりだと思っていた」
『自分さえ忘れれば』しかし、恐ろしい体験で受けた傷は時間と共に癒える所がトラウマやPTSDとなって金城さんをさらに苦しめました。
金城さん「突然、息が苦しくなって、汗がドット出て、現実感がなくなるような。そういう怖いことが何度も何度も起こった」
忌まわしい経験から40年が経っても、誰にも話せないまま精神安定剤を持ち歩く生活が続いた金城さん。しかし、去年誰かの役に立つのならと新聞のインタビューに応じたのをきっかけに、金城さんの心も少しずつ解きほぐされていったと話します。
金城さん「記憶っていうのが色あせなくて鮮明に思い出す。でもこうやって話すことで、だんだん自分の気持ちに整理がついてくる。一人で抱えているのではなくて、話すことでこのことが過去のことだったと自分の中で認識されてきて、それで傷が癒えていくのではないかと思います」
去年11月。強姦救援センターREICOが時間を延長しフリーダイヤルで行なった電話相談には、わずか1ヵ月で91件の相談がありました。その中では被害から20年以上経った事案が22件と最も多かったこともわかっています。
取材している秋山記者です。金城さんのように身近な人にも言えず苦しみを抱えて続け、生活する方はたくさんいるんですね?
秋山記者「性暴力というのは、被害を受けた人に何か落ち度があったのではないかという声も残念ながら今の社会ではあるため、相談しにくい。また、REICOの電話相談の中では8割もの人が身近な人から性暴力を受けていたということです。そのため、人間関係や将来のことを考え、声を上げることができない人も多いのではないでしょうか」
現在、性暴力被害を受けたときに相談できる施設は県内にどのくらいあるのですか?
秋山記者「現在、相談窓口は主にこちらの3カ所になります。場合によっては病院や警察への付き沿いなどもしてくれるということですが、曜日や時間帯に制限があること、病院や警察、カウンセラーの元へ被害者自ら足を運ばなければならないということがやはりネックになっているようです」
そこでワンストップ支援センターが必要なのですね?
秋山記者「県が2014年度を目標に設置を検討するワンストップ支援センター。名前の通り、一カ所でカウンセリングや産婦人科の診察、場合によっては警察や弁護士への相談も同じ場所でできる施設です。そのワンストップ支援センターについてこちらをご覧ください」
『早急なワンストップ支援センターの設立と話し合いに、当事者を加えていただくことを強く臨みます』
金城さんは去年、他の被害者と共に「ワンストップ支援センターの設立を強く望む会」を立ち上げ、県への陳情をおこなったり、シンポジウムを開いては県民によりよいセンターについて共に考えてほしいと呼び掛けています。
現在、国内には5つの都道府県ですでに設置されていますが、設置場所も運営形態も様々。その中で今最も理想的な施設と言われている大阪の性暴力救援センターSACHICO。
2日、SACHICOの代表であり、産婦人科医の加藤治子さんが那覇市で講演を行いました。
加藤治子代表「裁判官が無罪ですと言ったら、これは性犯罪じゃないってことを社会で決められてしまう。じゃあ私は被害者じゃないのか。『私は被害者』なんです。だからその被害者を支援して『あなたは悪くない』ということをはっきり言ってくれる場所が必要」
大阪SACHICOでは、30人の支援員と5人の女性産婦人科医師が24時間365日体制で常駐、担当の女性弁護士もいます。そんなSACHIKOが2年間で受けた相談件数は4835件。センターを訪れた人は1000人を超えます。
加藤治子代表「被害のあった方が電話を掛けるというのはとても勇気のいることですけど、やっと電話を掛けた時に『只今やっていません、また明日かけてください』というメッセージではもうかけられなくなる」
加藤さんはワンストップ支援センターは産婦人科医のある病院内への設置が望ましく、24時間体制であること。そして精神科医師・弁護士・警察などとの連携が重要だと強調しました。
金城さん「一刻も早く苦しんでいる人たちのためにセンターを作りたい」
秋山記者「大阪のSACHICOは病院の一角に設けられていて、産婦人科的診察をいつでも受けられます。感染症検査や事後避妊薬の投与などが迅速に行われています。県は先月から関係者を集めて準備会議を始めました。やはり大切なのは被害にあった人が利用しやすい施設を作ること。当事者の声を聞き十分な長さんをしてほしいと願います」