先月、浦添市にオープンした「Cafe花華」。木目をいかし、落ち着きのあるしゃれた店内。店のお勧めは、オーガニックコーヒーです。
上野照雄さん「失礼します。お待たせいたしました。オーガニックコーヒーになります。これは有機栽培コーヒーでして、一度飲んでいただければ味の違いがわかると思います。できたらミルクと砂糖抜きで最初飲んでみてください」
コーヒーを出してくれたのは上野照雄さん。常連客から店長と呼ばれる、このカフェのリーダー的存在です。上野さんは、精神に障がいを抱えています。
障害者の就労を支援するこのカフェには現在、上野さんを含め、精神などに障がいを抱えるスタッフが7人います。彼らの調理を支えている福島さんは、彼らの働きぶりについて次のように語っています。
調理指導員・福島育子さん「仕事を一緒にやっていくうえで、すごく手際も良くて調理の方も(私の方が)補助してもらっているというかたちがある。一生懸命前向きにやっていく姿っていうのは、普通に働く人と何ら変わりない。もっとそれ以上に働く意欲っていうのは多分あると思います」
‘障害があっても働ける’そのことをこのカフェは教えてくれます。
現在、障害者の就労を支援する施設はいくつかのタイプがあり、上野さんの働くこのようなカフェは「A型」と呼ばれ、社会と近い位置にあり、最低賃金も守られています。障害を持ちながらも、社会復帰をめざす人たちががんばっている多くの人が、このような施設で働いています。
しかし現状は、一度障害を抱えてしまうと社会への復帰は困難となっています。
上野照雄さん「(障害を抱える前は)一般の仕事をしています。休息期間が長かったので、休息期間切れということで自動的に退職ということになりました。十何社一般企業を受けました。一回この病気になっちゃうと一般就労は無理かと思ったんですけど、ただまだどこかに一部の望みをかけて受けてみた。でもやっぱり現実は厳しいものです」
カフェ花華を管理している井口さんは障害者の就職が困難となっているのには二つの原因があると考えています。
井口千賀子さん「障害を負うことによってそれまでの自分自身の自尊心というものもだいぶ崩されてます。やっぱりどこかで自分は精神に障害をかかえているからということで、引いてしまうご自分がいらっしゃったり、不安感を抱えているということ、それが一番大きいんじゃないでしょうか」
度重なる就職活動の失敗。急に障害を抱え今まで出来たことが急に出来なくなる。それらが原因で失った自尊心を取り戻すのが就労支援の目的ですが、現状は十分ではありません。
井口千賀子さん「(就労支援事業所の数について)はっきり言って足りないと思います。就労の練習をさせていただく場所が増えれば、もっとご本人さんたちが就労に向けて意欲を持つ、それと社会の方が障害者に対しての理解を深めていく機会になると思いますので、そういう場所を増やしていってほしい」
井口千賀子さん「みなさん働きたいという意欲はたくさんあるんですね。ただ働きたいという意欲はあっても働ける場所がない、それに障害に適用した働く場所っていうのもなかなか開発されていないというのが現状ですので」
法定雇用率と達成企業数現在施行されている障害者雇用促進法では、民間企業は社員56人につき1人は障害者を雇うよう義務付けられています。しかし、半数近くがこの雇用率を達成できていません。その原因は何なのか。沖縄労働局に尋ねてみました。
沖縄労働局職業安定部・島田博和部長「やはり採用が負担だとかそこまでやる必要があるのかとか。一部には負担感しかまだ持ててないという事業主がいる」
障害者=負担と見られてしまう社会。しかし、実際に雇用してみると、企業はその偏見が間違ったものだったことに気づかされるといいます。
島田博和部長「実際に障害のある方を雇われて、周りにも刺激になるとかプラスの効果ですね、そういう職場の話も聞いたりしている。模範となっている、他の社員にもいい影響を与えられているようなケースもあったりとかそういった話もしながら、業主に訴えかけていくしかないのかなと思っています」
「障害者」と聞いたときに私たちが持つイメージ。それが偏見だと気づかなければなりません。そのうえで、なにができるのかをかんがえることです。カフェで働く上野さんやスタッフの姿から見えるものがあります。
上野照雄さん「偏見がないっていったらウソになりますので、とりあえず今こうやって頑張っている姿を見ていただいて、私たちのことを理解していただいて、その上で一般就労に取り組みたいと思います」