クジラの里として多くの人から親しまれている座間味島。この島に、一頭のイルカが迷い込んだのは去年8月のことでした。ビーチに打ちあがった状態で発見されたのはシワハイルカ。自力では泳げないほど衰弱していて、ライフセーバーや地元住民が、懸命な介抱をしました。
ざまみイルカ会の高松あすかさんも、シワハイルカの介抱に関わった一人です。
高松さん「栄養ドリンクだとかあげて、いったん回復して、その日の夜は皆で交代で様子を見ながらして、次の日の朝少し自分で息ができている ような感じだったので」
しばらくして、イルカは自分で泳ぎだし港の外に出て行きました。
高松さん「皆大喜びで、よかったよかったって 言ってバンザーイとかバイバ イ元気でねって言ってたんですけど、その一時間後にはまたこっち のビーチのほうでまた打ちあがっていて」
懸命な介抱も実らず、死んでしまったシワハイルカ。しかし、このシワハイルカから「命」について学ぼうという取組みが始まりました。
高松さん(子ども達へのレクチャー)「みんなで助けようとしましたが、残念ながら死んでしまいました。でも皆でイルカのことだとか、海のことをイルカさんから教えてもらおう、ということで骨を埋めました」
ざまみイルカ会は、死んでしまったシワハイルカを砂に埋め、骨格標本として取り出すことで、島のこども達の教育に役立てようと考えたのです。
高松さん「本当は海に返したいという気持ちもあったんですけどね、やっぱり皆で一緒に考えて島のこども達の今後のために新しい命を与えることが出来れば・・・」
標本作りは、骨を発掘するところから始まりました。発掘が終わると、骨を磨く作業。歯ブラシを使い、細かい場所まで丁寧に磨いていきます。イルカの骨を間近に見て、手に取るという体験は初めての子ども達、予想していなかった臭いに、声をあげます。
骨を磨くこどもたち「くさい!くさい!くさい!なんか骨が白いイメージだったのに木みたいな色してる。」歯を担当するこどもたち。頭骨を磨くこどもたち。
今回の標本作りを助けてくれたのは、国立科学博物館で海洋生物を研究している山田格さん。山田さんが骨がどんな風に組み合わさっているかを説明しながら作業を進めます。
山田先生の説明(骨の組み合わせ説明)「ここにあごの関節があってこちらにも関節があります。だからこれをこういうふうに合わせてやると、あ〜シワハイルカ♪」
そして1時間半後。高松さん「こどもたち〜出来ました〜。見に来てください、どうぞ〜」バラバラだった骨はひとつひとつ丁寧に並べられ、イルカの形に近づきました。日頃は見る事が出来ない骨格を前に「命」の存在を感じながらの作業になったようです。
女の子「もうちょっとツルツルだと思ったけど、かさかさしてた(から楽しかった)」男の子「バラバラだったけど組み立ててみたらイルカの形をしていたのでびっくりしました」「見た事のない骨を見る事が出来てとてもよかったです」
さらに沢山の命が生きている海を大切にしなくてはという思いも沸いたようです。女の子「ごみがないような海にしていきたいです」
高松さん「こどもだけじゃなくて実は大人もなんですけど、体験できたことが一番大きかったんじゃないかなと思うんですよね」「一匹のシワハイルカから全体のこの自然を愛する心っていうのがもっともっと育っていくといいなと思います。」
(全員で)『せーの、出来たー!』