最近、雨が続いています。雨が続くと、中北部の農地などで心配されるのが赤土の問題です。昔に比べるとそれほど聞かなくなってきた感はありますが、依然問題は残っているようです。赤土問題の今を取材しました。
ここは、本島北部にある沈砂池。赤土が畑から海へ流れ出るのを防ぐために設置された人工の池です。泥状の土は、近隣のサトウキビ畑から流れてきた赤土です。集まっているのは、近隣の農家の人などです。この日、ある実験が行われようとしています。
かつては主に、建設工事現場からの流出が問題となっていた赤土問題。1995年に赤土の流出を防止するための県条例が施行され、開発工事に対する規制が行われるようになりました。
県環境保全課・上原課長「平成5年に約52万トン、県の全域で流出量があるといわれてたのが、条例の施工後、平成13年の調査では30万トンに。6割程度に減少したといわれています」
全体量は着実に減る一方、まだ残る課題も。
上原課長「農地の流出が県全体の流出の7割程度といわれてますので、それをどうするかが課題だと思っています」
条例の施行前、農地からの流出が占める割合はおよそ6割。しかし、施行後には7割以上にも。最大の流出源である農地からの流出量は、民間開発や公共事業からの流出ほどには改善されていないのです。
赤土が流出する要因には、沖縄の強い雨や傾斜の多い地形、粒子の細かい土壌などがあります。青い海に流れ出た赤土。サンゴや魚を死滅させ、水産業や観光業に大きな影響を及ぼします。赤土の流出は農業を営む人にとっても頭の痛い問題。
農家「肥料を入れて雨が降って流れていって。そういうのが多いですね」
県では沈砂池のほか、畑の傾斜を緩やかにしたり、植物を植えて流出を防ぐグリーンベルトなど、赤土対策の啓発に努めていますが、農家にとってはコストと手間がかかるため、なかなか普及しないのが現状です。
県内のコンサルタント会社で、環境保全のプロジェクトなどを手がける冨坂峰人さん。紹介したのは、土のリサイクルに着目した新たな流出防止技術。
冨坂峰人さん「沈砂池に流れてきた土を(雨が)侵食しにくい形で改良して圃場(畑)に戻してやる」
沈砂池に溜まったドロドロの赤土。この状態では、畑に戻しても作物を育てることはできません。
取り出された秘密兵器は、デンプンを主成分にした粉末。これを土に入れ、混ぜ合わせると・・・。
「ドロドロ感がありません」
泥状だった土は、水分が抜け扱いやすい土に大変身。変化はそれだけではありません。
「これを水の中に入れます。濁りにならないですよね」
土の粒子同士がくっついて水に溶けにくい構造になったことで、雨が当たっても流れにくい土に。改良前の土を入れるとその差は一目瞭然です。
冨坂さん「元々は農家さんが一生懸命作った畑の土です。肥料分とか腐植とかけっこう入ってますので、これを何とか畑に戻してあげたいというのが狙いです」
実験に参加した当真さん。農業の傍ら、土木業も行う兼業農家です。実用化につながれば、一石二鳥だと話します。
当真さん「固まって畑にまた戻せるんだったらいいですね。みんなの仕事になるとまたいいんじゃないですかね」
実験は大成功。後日、冨坂さんを訪ねると、改良土を使った驚きの実験結果が。
冨坂さん「やはり見てみると、改良したものを混ぜたもの、あるいは改良したものそのもの、こっちのほうがやっぱり成長はいいですね」
種を植えておよそ2週間の野菜。芽の数や大きさに差が出ていました。今後は、改良土をより大きな畑に還元し、実用化へ弾みをつけたいと話す冨坂さん。
冨坂さん「同じような問題は、実は東南アジアではたくさん起こっている。ブラジルもそう、そこにどんどん紹介していきたいと思っています」
流れてしまった土を畑に戻して再利用するのは「イーフ返し」といって、昔から行われてきたそうなんですが、現代版「イーフ返し」では、それをさらに流出しにくい土にすることができるんですね。赤土問題に困っている国に、輸出できるような技術にできればいいですよね。