所信表明演説でも普天間基地の辺野古移設を明確に打ち出した野田総理。この数日間の閣僚や党三役の発言から、新政権の方向性を検証します。
前原政調会長「現在沖縄と様々な話し合いをしております。アメリカ側から見ていて、あるいは外側から見ていて全く進んでいないように見える時も、進んでいるということもありうるということはぜひご理解いただきたいと思います」
ワシントンで行った日米同盟に関する講演会で、普天間基地の辺野古移設が進んでいるようにも受け取れる意味深な発言をした前原政調会長。仲井真知事も稲嶺名護市長も県外移設を求めている中、この発言にはどんな意味が含まれているのでしょうか。
東日本大震災の復興対策、福島第一原発の事故を受けた脱原発政策を進めようとするもねじれ国会がもとで退陣に追い込まれた菅政権。そこで、自民党や公明党の合意を得ながら、復興政策を進めようと立ち上がったのが野田政権でした。しかし。
野田総理「時代の求めに応える確かな外交、安全保障政策を進めなければなりません。その際に軸となるのは日米関係だと思います」
沖縄県民は見直しを求めている普天間問題ですが、新政権にとっては県民の思いよりも、日米関係を維持することの方が重要なようです。それは玄葉外務大臣の発言からも感じられます。
玄葉外務大臣「先般、2プラス2で確認されたことは、踏まえて対応していくということにしなければならないと思います。とにかく踏んでも踏まれても蹴られても、誠心誠意、沖縄の皆さんと向き合っていくということが大変大事なことだと思います」
一体誰に踏まれても、蹴られてもと言いたいのか。その言葉からは、普天間問題を見直すと表明して退陣に追い込まれた鳩山政権の二の舞にはなりたくない、日米合意を粛々と進めていきたいそんな姿勢が伝わってきます。この翌日にはさらに。
玄葉外務大臣「それぞれの今までの資産とか、蓄積は生かした方が良いと思います。もっといえば、野党の方々の資産だって活用すべきかと思っています」
野党との連携をほのめかす玄葉外務大臣。沖縄国際大学の佐藤学教授は、民主党政権が自民党政権時代の政策に戻ろうとしていると指摘しています。
沖縄国際大学・佐藤学教授「自民党が政権交代の前に設定した枠組みに民主党は戻ってしまったわけです。アメリカとの関係の修復というところで、自民党との連携ということ、特に基地問題に関して自民党との政策をすり寄っていく形が、これから顕著になっていくんだろうと思っています」
与野党協調路線の野田政権の中で普天間移設問題の鍵を握るのが前原政調会長です。7月には自民党の議員らとともに名護市を訪問。現職の稲嶺市長を頭越しにして辺野古移設を容認してきた島袋前市長たちと振興策などについて意見交換をしました。
佐藤教授「沖縄に何度も来ては辺野古を進めるということで、様々なことをやってきたこと。その彼が今の政権の中枢に入っているわけですから、党を動かす立場で、辺野古を造るという立場で、色々なことができる立場になってきているわけですから、前原さんがこの後何をするかということを沖縄からは特に注目しなければいけない」
辺野古移設が進んでいるかのような発言をした前原政調会長。その言葉の真意はわかりませんが、今月政府は年内にも辺野古への基地建設を前提にした環境アセスメントの評価書を県に提出する方針です。
政権交代以降止まっていた辺野古への基地建設に向けた手続きを再開させるという野田政権。自民党と手を取り合ってさえやろうとしているその姿は、県民からどんどん離れていっているように見えます。
日米関係ばかりが重視され、沖縄県民の思いが置き去りにされているそんな印象を受けます。代表選では自らを泥臭いどじょうに例えた野田総理。沖縄の人たちのためにも、ぜひ汗をかいてほしいと思います。