新垣くん「ことしの1月、成人式のため帰省した功貴くんと再開する約束をしていましたが、事故にあい再開することができませんでした。あんな事故さえなかったら、今も、きょうも功貴と一緒に、仕事の話とか将来の夢を語りあったと思います。突然この世に存在しなくなった功貴。未だに信じられません」「これからもっともっと楽しい人生を送るはずだった」
ことし6月に行われた、日米地位協定の改定を求める抗議集会。アメリカ軍人や軍属が起こした事件・事故を日本で、公平に裁くことができないことに怒りを抱いた人たちが集まりました。
この集会のきっかけになったのは、ことし1月、沖縄市で起きた交通死亡事故です。この事故で、成人式のために沖縄に帰省していた与儀功貴さん(当時19)が亡くなりました。
運転していた相手の軍属の男性は、事故を起こしたときは「公務中」と判断されたため日本で裁判ができずに不起訴。アメリカ側で決まった処分が、運転禁止5年というものでした。
この事故が改めて露にした、日米地位協定の不公平感に、県内では、議会での講義決議が相次ぎ、「与儀功貴くんの遺族を支える会」が発足。署名運動も展開し、市町村の自治会単位で署名に取り組む動きも出始めています。
この事故から見える、日米地位協定の問題点はどこにあるのでしょうか。
日米地位協定の17条には、軍人・軍属の「公務中」の事件・事故については、アメリカ軍側に第一次裁判権があるとされています。
しかし、それが公務中かどうかを判断するのはアメリカ軍であり、日本の捜査機関では、本当に公務かどうかの確認は行われていませんでした。
軍属は軍法会議にかけられない。
今回の事故で、与儀さんの遺族は、軍属男性が不起訴となったのは不服だとして那覇検察審査会に申し立てを行いました。
申立書の中で指摘されているのは、合衆国連邦最高裁判所の判例で、平時、つまり戦争などの有事以外のときには軍属にアメリカ軍の裁判権が及ばず、軍属を軍法会議にかけることは憲法違反だということです。
池宮城弁護士「要するに、軍法会議にかけるってのは刑事処分なんですね。場合によっては禁固刑とか懲役何年とか。これが軍法会議でなされる刑事罰なんです。しかし軍属はそれができないということですから結局行政処分、免停だけで済ませたということですね。」
検察審査会でも、軍属は軍法会議で処罰されず、日本が裁判権を行使するべきだとして、起訴相当を議決しています。
5月中旬に、那覇地検へ届いた「5年間の運転免許剥奪」の通知。この処分内容には、管前総理も…
管前首相「やはり人の命が1人亡くなった中で、その処分が少なくとも日本の中の常識的な感覚からすると、5年間の免許停止というのは、あまりにも処罰としては弱いのではないかと。大変ご家族には申し訳ないと思っております。」
果たしてこれが、裁判権の行使といえるのでしょうか。この処分は、日本では、交通裁判などで下される、行政処分と同じものだと池宮城弁護士は言います。
池宮城弁護士「これはもう行政処分なんですね。決して刑事裁判じゃないです。」「人一人の息子の命を奪って、刑事処分じゃなくて、単なる免許停止5年ということで済まされたと。到底これは許せないということですね。」
池宮城弁護士「今回のように、被害者の車線に突っ込んできて、死亡させたこの過失も大変大きいわけですよ。だから日本の裁判で裁かれた場合は、懲役刑になる事案だと私は見てます。これが単なる運転免許の停止と。これはもう行政処分なんですね。決して刑事裁判じゃないです。それで許されると。これが実態ですね。」
那覇地検は、現在も、この処分が、どのような手続きでどのような理由で下されたのかアメリカ軍に照会中だとしていて、もし、裁判権の行使に当たらなければ、日本側で裁判権を行使するとしています。
しかし、日米地位協定には「懲戒の裁判権」の規定があり、もし、今回の処分がその裁判権の行使と判断された場合、今の協定のままでは、遺族は不公平感を抱いてはいても、打つ手は無くなってしまうのです。
若い世代に、不平等な地位協定を残してはいけない。6月に署名活動を始めてから、「与儀功貴くんの遺族を支える会」の元には8月末までに、およそ2万5千もの署名が届いていて、今月24日にも、北谷町で署名をよびかける予定です。
玉那覇さん「できるだけたくさんのみなさんに、署名をしていいただいて、それをまた、県あるいは日本政府、そして米国までも届けようっていうのが、今みんなの思いです。」
これまで幾度となく改定要求がなされてきた日米地位協定。「果たして本当に変わるのだろうか」それぞれが疑問を胸にしまって地道な署名活動を続けています。
新垣くん「二度と帰ってこない功貴くんの死はいったいなんだったのか。誰にこの悔しさをぶつければ、いったい僕らは、この沖縄は、変わるのか、教えてほしいです!」