おととし、本島中部で中学生の集団暴行事件がありました。発生当初は転落事故だと思われていましたが、後に被害者の同級生による集団暴行事件と判明しました。
事件の加害者が14歳と13歳の少年たちだったこともあって、被害者の遺族が事件の詳しい内容や学校での被害者と加害者の関係について知ることは難しいものでした。事件から1年あまりが経過し、ことし3月、当時の同級生たちは卒業を迎えました。亡くなった息子の代わりに卒業式に臨む母親を取材しました。
先月、本島中部の中学校で行われた卒業式。そこに、ある女性の姿がありました。彼女はおととし、中学2年生の息子、星斗さんを同級生からの暴行によって亡くしました。
星斗さんの母親「卒業式を迎えますけど、本人はいないので。代理として出席しますけど、複雑です」
事件があったのはおととし11月。同じ中学校に通う同級生8人に呼び出され、およそ3時間にわたり、殴る蹴るの暴行を受けた末に亡くなりました。
星斗さんの母親「目が半開きで…意識も保てなくて」
加害者は8人。全員が星斗さんの同級生でした。
校長「学校は色んな件について包み隠さずご遺族に報告しながらやっていきたいと思っています」
その後の会見で、学校側は驚くべきことを明らかにしました。事件の4ヵ月も前から、星斗さんが体にあざを作って帰宅したことがあると、母親から何度か相談を受けていたというのです。
学校「今の年代のことですから、なんらかの力関係と先ほど言いましたけど、上下関係と言ってもいいのでしょうか」
しかし、母親には学校側がどのようないじめの調査をしたのかさえも伝えられることはなく、学校に対する遺族の不信感は募るばかり。母親は何度も学校や教育委員会に足を運びましたが、結局、学校の中で何があったのか、知ることはできませんでした。
迎えた卒業式当日。
星斗さんの母親「卒業式で唄う歌が3つある。それを毎日、練習しようって聞かせてる」
しかし、その卒業式も母親にとっていたたまれないものでした。他の生徒が意気揚々と舞台に上がる中で、母親には星斗さんの遺影がぽつんと席に取り残されたように見えたからです。
星斗さんの母親「立つとこでは立って、同じようにやるのかなと思ったら、そうではなくて座ってて、ぽつんと1人だけ。平等に扱われてるって感じがしなかった」
唯一の救いは、星斗君のことを忘れないでいてくれた生徒たちでした。
生徒「ぽっかりと大きな穴があいたように感じました。このような出来事は二度とあってはいけません。それでも私達は忘れずに乗り越えていきます」
星斗さんの母親「大人がやらないといけないことであって。あの子見てたら心痛くなって、もうありがたいなと。決められた内容だったとしても、自分はありがたかった」
事件から1年以上が経った今でも、学校の中で星斗さんの身に何があったのか、遺族は何も知らされていません。事件をハレモノのように扱い、時間が過ぎるのに任せてうやむやにしてしまうのか。学校の対応に母親の悲しみは募ります。
星斗さんの母親「はい星斗ー。帰ってきたよ卒業式から。いい卒業式じゃなかったね、星斗。やっと卒業だね」
なぜ自分の子どもが被害にあったのか、学校がいじめについてどういう対応をしているのかなど、知りたいと思っていても知ることができないとなると心は落ち着く方向には向かないですね。今回の事件の遺族の母親も、息子や加害者が学校の中でどのように過ごしていたのかを知ろうと何度も学校や教育委員会にかけあっていたそうですが、卒業の日を迎えるまで具体的な説明は受けたことがないということです。
どういう事件が、なぜ起きたのかきちんと向き合って考えることが遺族に誠実に応えるということにも二度と同じことが起きないようにするということにもつながるのではないでしょうか。