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ハンセン病は治る病気だったにも関わらず、国の隔離政策によって長く偏見や差別を助長され続けてきました。来月1日で「らい予防法」の廃止から15年を迎えますが、社会には未だ根強く偏見が残っています。法律が廃止される以前からハンセン病回復者である事を名乗り、「差別と偏見」を社会に問い続けた男性を追いました。

伊波敏男さん「事実が知らない,ということともう一つは「正しく伝えられていない」ということでしょ言葉で言うと「偏見」なんだね。」

沖縄出身で現在長野県に住む、伊波敏男さんはハンセン病回復者です。伊波さんは、若い世代にハンセン病問題を正しく理解してもらおうと、20年前から学校を中心に講演活動を続けています。その回数はこれまでに450回、講演を聴いた中高校生の数は10万人にも上っています。伊波さんは、体験者だから伝えられる事があると話します。

伊波さん「当事者の私がハンセン病を実際に体験した人、たまたまハンセン病だけど色んな社会的な差別を体験した人が、その、自分の体験を含めてその伝えていく、語っていくという意味はそこにあると思うんだよねぇ。」

薬で治っているにも拘わらずハンセン病回復者の隔離政策をとり続けてきた「らい予防法」が廃止されたのが、15年前のことです。

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らい予防法廃止から5年後、ハンセン病回復者らが国を相手取り、隔離政策によってもたらされた人権侵害に対する賠償と、人間としての尊厳の回復を求めた国家賠償請求訴訟の初めての判決が熊本地裁で言い渡されました。結果は原告の全面勝訴でした。

控訴を断念した国は、声明を出しハンセン病回復者の人権の回復に努めることを約束しました…。ハンセン病回復者らの期待は膨らみました。しかし判決から2年後、熊本にあるホテルがハンセン病回復者の団体の宿泊を拒否したのです。他の宿泊客へ与える影響が大きいというのが理由でした。

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このことが報道されるとホテル側は謝罪し最終的に廃業に追い込まれました。しかしその一方で回復者の団体には露骨ないやがらせの電話やFAXが全国から寄せられたのです。

伊波さん「法律が変わった。国のねぇ方針が舵を切られた、しかしねぇ一回社会の沈殿された社会意識というのは、そんなに簡単には変わらないわけよぉ」

中学生のときにハンセン病を発症し伊波さんは、名護市にある沖縄愛楽園に強制的に入所させられました。沖縄愛楽園は1938年に県立のハンセン病療養所として設立され、現在、233人が入所しています。この日、伊波さんは、回復者の現状を知りたいと園を訪れました。

沖縄愛楽園で自治会長を務める金城雅春さんは、「らい予防法」が廃止され国賠訴訟で回復者が国に勝訴してから、社会のハンセン病問題に対する認識が変わってきていると話します。

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金城雅春さん「知っている人の中では、子どもの結婚のときにも親はハンセン病だったよとちゃんと紹介してちゃんと結婚している,ちゃんと生活しているし、その相手方の親御さんもですねそういうことで理解している。」

しかし回復者の今の悩みは、一番理解してほしい家族が受け入れてくれないことだと金城さんは訴えます。金城雅春さん「一番身近にです、問題があるんです。身内に問題が、身内がもっとですね堂々としてくれれば本人も,もっと堂々としてくれるんだろうと思うんですけどねぇ,身内対策をどうするかという課題なんですよ。」

長年、社会から受けいていた偏見や差別により病気と向き合うことがまだ出来ないでいる家族と回復者が多くいると金城さんは話します。そして、伊波さんは、ハンセン病問題は「社会の無関心」の結果であると指摘します。

伊波さん「ハンセン病問題というのはみんなねぇ、無関心、自分とは関係ないということで、国の政策を結果的に100年近くも容認し続けたわけよ過ちは早めに気付く事。過ちを気付いた時には誰かが声を上げること・・・。」

そして、この問題の解決には社会が、もっとハンセン病回復者やその家族に目をしっかり向けることが大切だと訴えます。

伊波さん「ハンセン病回復者の人たちの心は痛んでいます、泣いています。で、それを支えるのは国民一人ひとりですということ,偏見や差別が消えるまで。伊波さんの、社会への呼びかけは続きます。」

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ハンセン病問題の解決に向けて国も2009年にハンセン病問題基本法を施行させ、ハンセン病回復者の人権回復などに取り組むと明記しています。しかし、法律を設定するだけでは、なかなか「差別や偏見」はなくならないわけですから、ひとりひとりが正しい知識をもって意識を変えていかなければいけません。

伊波さんが、次の世代を担う子どもたちにハンセン病問題に対する正しい認識を伝えるのは、間違った情報を教えられてきた親や祖父母の世代に子どもたちから伝えて欲しいという思いからです。

時間はかかりますが、社会全体で取り組まなければいけない課題です。