三上:ここからは取材した中村記者に聞きます。中村さん。高裁でも安里さんが勝訴しましたが裁判で勝っても日米の協定で職場への復帰が出来ない可能性があるということですが?
中村:はい、高裁はこの裁判で両者に対して和解勧告をしていて、先月、和解協議が開かれましたが、そのなかで国側が、「日米間で結ばれている諸機関労務協約に基づきアメリカ軍側が復職を認めない可能性がある」と安里さん側に回答したということです。その結果、和解には至らずきょうの判決になった訳です。
中村:諸機関労務協約について、琉大法科大学院の高良鉄美(たからてつみ)教授にお話して聞いていますのでご覧ください。
高良鉄美教授「(基地)従業員の契約、労働雇用契約、こういったものがどういう扱いになるかとうのが(日米)地位協定のなかにあって、基本的には通常の民間労働者と違った扱いになるわけですねぇ。結局、米軍優位ってねそういうものが明らかに(地位協定のなかに)含まれていて全体の流れを米軍のを優先していくっていうのがあるんですね。」
三上:安全上の理由といえば横暴な解雇も通ってきた。それは考えをなぞったものなんですね。
中村:国はまだ上告について検討していますが、このまま判決が確定しても、もう一つ日米地位協定や労務協約上で問題があります。判決が確定してもアメリカ軍が安里さんの復職を認めないとなると、安里さんの復職に向けた協議が日米間で開かれます。
中村:しかしその協議も30日間だけです。協議で解決できず、それを超えると安里さんは復職できなくなりますから、アメリカ軍に時間稼ぎをされないかという危惧もあります。
中村:今回、アメリカ軍は「安里さんの暴言を吐くなどの行為は軍の秩序を乱し安全上の理由で問題がある」として解雇し、同様に国も裁判で主張してきました。しかし高裁はその主張に対して、「安里さんの行為は、労務協約に明記されている<秩序を乱す行為>に該当しないこと明らかである」と退け、解雇の無効を認めました。
中村:軍側が主張している根拠は完全に否定されたわけですから、そんなに引っ張る問題ではありませんから、国は上告するかどうかというより、安里さんの復職にむけた交渉をするべきだと思います。
謝花:司法の判断でましたが、政府は本当に出来るのでしょうか?
中村:その点を危惧しているのが、高良先生なんですが、この話を聞いてください。
高良鉄美教授「米軍が関わるという問題になってくると急に(司法の判決の)実効性がなくなるということになると日本国民の人権というのがねぇ、米軍が関わってきたらどうしようもないのか!という問題になってくるわけですよね」
中村:アメリカ軍は「安全上の理由」を振りかざせば解雇権を乱用できるという認識で、これまできたかもしれません。
中村:しかし安里さんのケースは「秩序を乱す行為に相当しない」として解雇は無効だと日本の司法判断が出来たわけですから、シンプルにアメリカ軍はそれを受けて、安里さんを引き続き雇う責任があります。それを国はアメリカ軍に必ず実行させなければいけないと思います。