※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

406人。これは去年、県内で自ら命を絶った人の数です。自殺の原因は、金銭的な問題やこじれた人間関係など様々なものがあります。これらの原因によって精神的に追い込まれ、悩み、身体的にも不調が起きているのを自覚しながら誰に打ち明けたらいいのかわからずにある日突然、最悪の結果となってしまうケースが少なくありません。自殺を未然に防ぐ、県内のメンタルヘルスケアの実情を取材しました。金城記者です。

日本産業カウンセラー協会沖縄支部長・大盛勝仁さん「自殺に至るまでのいろんな悩み、問題を抱えて一人で悩んでいらっしゃったと思うんですが、その段階で自殺に至るという結論を出す前に、周りの人に一言でもまずは相談してほしかった」

県内の自殺者はこれまで300人台で推移してきました。しかし去年、406人に達し、過去最悪となりました。内訳は男性が300人、女性が106人。特に40代から50代の働き盛りの男性の割合が高くなっています。

企業や団体を対象にカウンセリングを行っている沖縄支部。大盛さんは自殺予防対策として4点を挙げました。それは、気付く、相談相手の話を聞く、医療機関などへつなぐ、そして経過を見守るということです。

企業でもメンタルヘルスケアの取り組みが行われるようになっています。

日本産業カウンセラー協会沖縄支部長・大盛勝仁さん「積極的に取り組んでいる企業とか、まだまだという割合は?いやもう、かなり少ないですね。認識はあるんですけれども、いろいろやるにしてもやはり予算の関係で、やりたい、だけど経営的に難しいというところが多いですね」

職場の人間関係から軽度のうつ病となり、時間をかけて克服した男性がインタビューに応じてくれました。この男性はある時から眠れない状態となり、食事も細くなって、好きな仲間との飲み会も参加しなくなったといいます。

男性「半年で眠れない状態というのが続いている時に、周りの人からカウンセラー行ったらどうかという話を聞いて」「心療内科医を紹介していただいて、カウンセラーの人にお話しして治療を受けていた」

カウンセリングに当たったのが大盛さんたちの沖縄支部でした。男性「時間かけてもいいから頑張って治療しよう、いろいろ話を聞いてもらって。あとお医者さん行って薬を飲んだりして、もっと早く元の状態に戻ろうというのはありました」治療、カウンセリングは1年以上に及んだといいます。

男性「もしそれやっていなければどうなったと?それやっていなかったら、良くてただ生きているだけの人間で、悪かったら自殺していた可能性はありますね」この男性は自身の体験から、ちょっとおかしいと思ったら誰かに話を聞いてもらうことが大事と言います。

日本産業カウンセラー協会沖縄支部長・大盛勝仁さん「どんな些細なことでもまず胸に溜まったところを外に言葉にして吐き出すということが大切なので、まず自分自身が悩んだ時には、まず言葉に出せる相談機関を探して電話をするなり、訪問して見るなり、まずは問い合わせてみる」

大盛さんたちが企業や団体を対象にしているのに対し、一般県民からの電話相談を受けているのが、「沖縄いのちの電話」です。専門家の講習を受けた市民ボランティアが、かかって来る電話の相手の話を聞くことに徹しています。相談者のプライバシー保護の観点から所在地や相談内容は秘密にされています。

今回、運営委員の渡久山さんが「いのちの電話」について話してくれました。「沖縄いのちの電話」運営委員・渡久山朝裕さん「40代前半の男性ということにしましょうか。その方がかけて来た時には、もう数か月どこにも出ないで、自室でこもっていると。目の前に農薬を買って準備していると。飲んで死ぬというような状況ですよね」

緊急を要する事例には住所を聞き出すなど踏み込んだ応対を行い、警察や消防への通報も例外的に行うといいます。「沖縄いのちの電話」運営委員・渡久山朝裕さん「住所を教えてもらい、周りに迷惑がかかりますからサイレンは鳴らさないで来て下さいとのことで、(救急に)行ってもらって病院に入院してもらって回復したと」渡久山さんは、いのちの電話は自殺を考えて電話してくる人との命の糸であり、命をつなぐ最前線だと言います。

「沖縄いのちの電話」運営委員・渡久山朝裕さん「誰にも言わず、電話もかけず、相談もしないで自殺されていく中高年の男性が多いということです」「そういうような方々が苦しい胸の内を誰かに言える、それを聞いてくれる人が周りにいる。そういう体制をつくるのが大事ではないでしょうか」