12日、県内25の市町村で行われた統一地方選。なかでも、政府が普天間基地の移設先とさだめ全国的に注目をあつめた名護市議選では建設反対を主張する稲嶺市長支持派の議員が過半数を獲得。普天間基地移設問題はさらに混迷をきわめることとなりそうです。
名護市議会議員選挙には定数27の議席に対し37人が立候補し移設に反対する稲嶺市長を支持する18人と容認する立場の17人が激しい選挙戦を展開しました。12日即日開票の結果稲嶺市長を支持する候補が16議席を獲得。条件付、移設容認派を5議席、上回って過半数となり、再び移設反対の民意が示されました。
今回の選挙は結果次第で日米が合意した普天間基地の名護市辺野古への移設に大きな影響を与えるだけに全国的な注目を集めていました。移設反対の意思を表明してきた稲嶺市長を支持する議員が過半数を占めたことで政府の移設作業は一層困難となりそうです。
名護市議選の結果をうけ名護市民、稲嶺名護市長、そして政府の反応です。
市長派が過半数を占めた今回の結果に名護市民は「民意が示されたわけですから貫き通してやってほしい」「(状況を)変えるために小さな1歩でも、みんなが意見揃えて声出してやっていくのは大切」と答えていました。
また稲嶺市長は開票後、「名護市民の思い、というのを今回の市議選でもしっかり見せて頂いた。それ(移設反対の主張)をきっちりと評価していただいと思って大変心強く思っています」「過半数以上の応援ができた事でさらに政府に堂々と(移設反対を)言える環境が出来たと思っています」と記者団に語りました。
そして仙谷官房長官は会見で「我々としては地元のご理解を頂けるような従来からの説明とお願い、説得を続けていくしかないと思っております」と淡々と答えていました。
記者解説 名護市議結果で普天間問題は?
選挙担当の岸本記者です。今回、市長派が圧勝した最大の理由は何だったのか?
ほんとにびっくりするくらいの大差でしたが、その理由は一言でいうと、「市長派」・「反市長派」という対立軸の中で稲嶺市長のこれまでの市政運営を評価した人が多かったということ。そして「反市長派」が基地以外の政策をうまく訴えられる候補者を立てられなかったということも挙げられると思います。
私はきのう、開票所でずっと取材していたんですが、どの候補も同じくらいの票が積まれてですね。9時に開票が始まってから2時間が過ぎても、だれが当選するのか、分からない状態だったんですね。
ですが、11時半ごろになって、候補者の中で明らかに票が足りずに落選した人の方が先に分かってきた。その中に反市長派の候補が6人もいたんですね。
その一方で、「市長派」は現職のベテラン議員を中心に反市長派よりも一人多い18人の候補を立てて、明確な主張を打ち出して選挙戦を戦いました。
名護市長「16対11になりました!」「バンザーイ!!」市長派の圧勝が決まり、満面の笑みで喜びを分かち合う稲嶺名護市長。
1476票の最多得票を獲得して当選した岸本建男元名護市長の長男、洋平さんの事務所ではこんな声も掛かりました。「よっ!名護市の2トップ!」将来の市長候補とすでに一部から名前も挙がっている洋平さん。市長派の勝利は、稲嶺市政が市民に評価された結果だと語ります。
岸本洋平さん「(稲嶺)市長の支えもあって、市長の政策も評価されているということだと思います」「市民に近い存在として、やっぱりこれから未来を切り開いていくという意気込みを持って、皆さまへの感謝の気持ちを忘れずにやっていきたいと思う」
そして、基地移設反対を全面に訴えて、2番目に多い票を獲得した仲村善幸さん。
仲村善幸さん「私は市民の皆さんに一貫して、稲嶺市政を支える。それは基地建設を止めていくことだと終始訴えてきたことが私の当選につながったと思っています」「名護市にもう基地はいらないんだという思いが、私の当選として結実したと思いますので、稲嶺市政をこれから本当に支えながら頑張っていこうと」
一方、反市長派として辺野古区から立候補し当選した宮城安秀さん。「厳しい選挙戦だったのかなという思いですね」普天間基地の辺野古移設推進協議会の前会長である宮城さんは「条件付き移設容認」の姿勢は変えないと語りました。
宮城安秀さん「移設問題においては、区・行政とですねいろいろ協議をしながら進めていかなければならないだろうしまだ市長といろいと協議をしたこともないんで、これから市長の考え方も伺いながら、行政と連絡を通じて進めていければいいかなと思っています」
宮城さんを含め、移設容認に立場が近い候補の後ろ盾になっていた島袋前市長。惨敗の結果に事務所の雰囲気はとても重くその扉は、最後まで完全に報道陣には閉ざされたままでした。
島袋前市長「頑張ったけど・・・」「申し訳ない」
本当に明暗がくっきり分かれた感じですね。政府としては名護市議選で移設容認派が勝てば、議会を通して、名護市に揺さぶりをかけることも出来た訳ですが、今回、その可能性も完全に消えたことになります。名護市が完全に移設反対で一枚岩になった訳ですから県内移設がより困難になったことは間違いありません。以前は、県内移設を容認していた仲井真知事も今ではこう述べています。
仲井真知事「(普天間基地は)県外へという大きな流れがある」「(辺野古への移設は)極めて極めて厳しいとしか言いようがない」「(政府が方針を変えた理由について地元に)納得がいく説明が必要だと思う」
仲井真知事は次の知事選では、政策を変えるんでしょうか?
そうなりますね。仲井真知事は、県議会で決議された「普天間の県外・国外への移設を求める意見書を尊重する」という政策で次の知事選を戦います。
そして、すでに立候補を決めている宜野湾市の伊波市長は普天間基地の海兵隊はアメリカ軍が自らグアムに移転させるから移設場所を探す必要はないとずっと主張していますし、
現在、候補者を選考中の第3極も「辺野古移設」には反対です。
ですから次の知事選は、すべての候補が「県内移設反対」となる可能性が高い。
そうなると、政府にとってはますます厳しい状況に追い込まれることになります。
そうですね。仲井真知事は、「県民が反対しているから県内移設は厳しいですよ」という言い方をされるんですが、その辺を県民がどう判断するかも注目ですね。