シリーズ参院選、きょうは基地問題を巡る各候補の攻防戦をお伝えします。
普天間問題を巡る党内の混乱から、国政与党である民主党が候補者の擁立を断念。こうした中、県内では4人の候補者のうち3人が普天間基地の県内移設に反対を表明し、民主党支持者の票を獲得しようと必死です。その動きから見えてくるそれぞえの思惑を取材しました。
島尻候補「私は今回鳩山政権下で合意された日米合意には真っ向から断固反対を申し上げます」
山城候補「政府は鳩山首相から菅首相へ看板を変えることで、沖縄の基地問題が終わったという風に逃げきろうとしています」
伊集候補「沖縄に絶対米軍基地は造らせない、この決意を固めました」
普天間基地の辺野古移設にそろって反対する3人。こう主張する裏には、もう一つの大きな事情がありました。
去年の衆院選で普天間基地の県外移設を打ち出し、圧勝したものの、わずか8カ月で方針転換し、沖縄では候補者を擁立できないという異常事態に陥った民主党。いま、各候補にとって、行き場の決まっていない民主票をどれだけ取り込めるかが勝負の鍵なのです。
自民党で、衆参唯一の国会議員となっている島尻さん。何としても負けられない選挙戦に臨み、辺野古移設容認の立場から、反対に転じました。
島尻候補「これはやはりベースは県民総意ですから、県民がそれに対してノーということであれば、そこを曲げてまでやることは私はできないと思っています」
県連では初めて県内の有権者に向けたローカル版マニフェストを作成。5万部を配って「県内移設反対」の立場をアピールしています。
自民党県連・佐喜真政調会長「我々県連としても県外・国外というのは、県連の中でも公約の目玉としてやっておりますので」
福島党首「沖縄の皆さん、今回の選挙は辺野古に基地を造らせない選挙です」
一方、社民・社大が推す山城さん。連立政権を離脱してまでも普天間の県外・国外移設の立場を貫いた福島党首を連れだって各地を行脚。「県民目線」をアピールしました。
山城候補「福島党首のとられた態度は立派だと思います。毅然として勇気ある行動だったと思います」
こうした候補たちの動きを地域行政専門で、普天間問題に詳しい沖縄国際大学の佐藤学教授はこう見ます。
佐藤学教授「絶対造りますといって、当選した人はいない。沖縄での基地が絡んだ選挙は大体、いつも争点がぼかされる。選挙の段階での有権者の判断とこれから何が行われるかというか間には、常に切り離されてきた」
実際、候補たちの訴えには多くの疑問があります。自民党本部が作ったマニフェスト。これには日米同盟を深め、在日米軍再編を進めると書かれています。つまりそれは「名護市辺野古沿岸部にV字型滑走路を造り、普天間基地を移設する」という前政権がアメリカと合意した計画を進めることともとれるのです。
また社民党についても、連立を離脱したにも関わらず、選挙では民主党に支持を求めていてそれには矛盾が指摘されています。
島尻候補「民主党の支持を期待しているとおっしゃっていますが」
山城候補「基地の県内移設反対、県外、国外移設に向け、とも団結している民主党県連の痛みを受け止めて、大同団結しようという風に訴えているわけです」
また共産党は「米軍基地の無条件撤去」を訴えていますが、実現可能性が不透明との声もあがっているのです。
佐藤学教授「(自民党は)自分たちが進めていた実現できるはずだったものを壊したといいう批判。何がどう反対なのかはよくわからない、この後どうするかも。山城さんに関して言うと、一つは民主党との関係はどうするのか、県連は反対と言っているけれども、その大本は認めないわけだから」
3人の候補がそろって反対を掲げる普天間基地の県内移設。言葉尻では同じことを訴えているようですが、その裏側には民主票を取り込むための矛盾や苦肉の策が透けて見えます。
本来ならば、民主党政権への中間評価と位置づけられる選挙のはずでしたが、沖縄は与党の候補者がいない空白区となったため、みんながそろって現政権を批判し合っているという違いがわかりにくい構図になっています。
とはいえ、基地問題はやはり県民にとって沖縄の将来を決める重大なテーマ。有権者は候補者やその党が今回の選挙でどう主張しているかだけでなく、これまでどんな政策を展開してきたのか、これから政策を実現する見通しがあるのか、しっかりと見極めなくてはなりません。