家庭という密室で行われ、人目につきにくく、病院や児童相談所などでの、虐待を察知し防ぐか取り組みが重要となっています。現状を取材しました。
去年6月、石垣市のアパートで29歳の父親が当時3歳の息子の頭を殴り死亡させたとして傷害致死の罪で逮捕起訴されました。虐待の疑いがあると、中央児童相談所八重山分室に報告があり対策をとっていた矢先の事でした。男の子の死を防げなかったのか。県の社会福祉審議会は、事件の経過から現状を分析し子どもの安全を最優先に虐待対応の見直しをするとした結果を県や国に提出しました。
しかし、子どもへの虐待は後を絶ちません。10月にはうるま市で交際している相手の当時4歳の娘に暴行を加えたとして男が逮捕されるなど現状は改善したとはいえません。2008年度に県が児童虐待として対応した件数は408件。2007年度より32件減っていますが、過去5年の状況はほぼ横ばいです。
南部子ども医療センターの宮城雅也(みやぎまさや)医師は、けがをした子どもがやってくると軽症でもまず虐待を疑って診察をするように心がけています。
宮城先生「一番わかるのは親の態度がやっぱりおかしいとなんかこの子がどうやってけがしたのか,そういうのがちょっとかわかりにくい。本人の説明が変わったり、いろんなかっこうでですねあやふやな点が多い。まず疑うところなんですね。」
子どものけがが虐待によるものだとわかった場合、親への対応はより慎重にしなければならないと話します。親が心を閉ざすと子どもの治療が難しくなるからです。
宮城先生「あまりこちらから子どものためにということで責めるような形で親と接触をするとですね、そこで、治療の関係が切れてしまうんですよ。お互いに信頼関係ができないとねだめなんです。どんなに悪い親でも治療にあたって信頼関係を保たないといけないということですね。」
多くの虐待のケースに接してきた宮城医師ですが、けがなど外見でわかる虐待以外に育児放棄などの虐待も多いとかんじています。
宮城先生「普通にみて一般に思える家庭でも虐待は起きてきていると。育児支援が必要な家族をいかに早く見つけていくかということが大きな課題だと思っています。」
子どもを守る為に虐待をする親にどう対応するか。病院や学校などから、「虐待の疑い」の通報を受けた相談所は、子どもの安全を確保して親と面談。繰り返し話しを聞いて、この家庭の、最善の支援の仕方を探ります。
上原さん「子どもが育っている状況、親の持っているいろいろな悩みとかですね、また性格とか、また、いろんな経済状況とか」「解決に導くためにですね、何回か数回の面接を繰り返してですねやるわけです。」
虐待は親のSOSだと指摘する上原さん。中には虐待をとめられずに悩む親もいて、そのSOSを受け止める事が大切だといいます。
上原さん「(本人が虐待していること)を黙って隠してなかったということをやるとですね、どんどんどん解決が遠ざかっていくし、(本人は)殻に閉じこもってしまいます。親自らですね、そういう形ですね、私たちと向き合っていただきたいと。それが解決の大きな第一歩だと思います」
子育てに悩んだら、まず周囲に相談をして孤立をふせぎ、もし周囲で、虐待の疑いがあると感じたら相談所などに連絡してほしいと呼びかけます。
虐待は子どもの心身に大きな影響を与えます。子どもはいずれ社会の一員になるという未来がある事も考えると私達は 地域の子どもに無関心ではいられません。孤立している親のサポートやケア、近所の人達が気にかけることで防げる「虐待」があるのではないでしょうか。