Qリポートです。読谷村で男性がひき逃げされ死亡した事件から、10日が経ちました。男性をはねた車を修理工場に持ち込み、事件当日に現場付近を運転していたことも認めているアメリカ兵は、現在読谷村の基地内にいて、ここ数日は任意の事情聴取にも応じていません。こうした事件のたびに問題視されてきた日米地位協定問題を考えます。久田記者の報告です。
今月7日、読谷補助飛行場跡地の外周道路わきで、村内に住む、外間政和さんが、遺体で見つかりました。早朝のウォーキングが日課だったという状況から、遺体はおよそ半日の間、現場に放置されていたと見られています。そして、遺体発見の数時間前、隣の嘉手納町の修理工場に、事故を起こしたとみられるアメリカ軍関係者の車両が持ち込まれていたことが分かりました。
県警は、修理工場に預けられた車に、外間さんの血痕があることを確認。事故から3日後には、現場近くに住む27歳のアメリカ陸軍兵の自宅を捜索するなど、一気に捜査を進めました。
新垣修幸 村議「去年の9月21日にもですね、飲酒運転で」「住宅のブロックを壊し、隣の門扉を壊してですね」「幸いにしてあの時は、物損事故だけで済ましたわけですが、今回は尊い村民の命が失われたと」村は事件への抗議決議と意見書を可決し、強い抗議の意思を示しました。
アメリカ軍側は、事故を起こした車を修理に出した陸軍兵が、事件当日の運転も認めたと発表。しかし県警は、まだ容疑者ではなく、「事件の関係者」という立場です。
同様の事例は過去にも… 23歳のアメリカ海兵隊員が、酒を飲んで車を運転し、ミニバイクに乗った女子高生を跳ねて、そのまま逃走したというものです。この事件では、当時18歳の女子高生が死亡。海兵隊員は事故直後に基地のゲートで身柄を確保されましたが、県警への身柄引き渡しは、起訴後になりました。
今年4月、那覇市で3人が重傷を負ったひき逃げ事件も、飲酒運転の海兵隊員によるものでした。基地内に逃げ帰った海兵隊員は、この時も起訴後に身柄が引渡され、飲酒運転の供述がありながら、立証ができない結果となりました。そして今回の事件では、これまでにない動きも見られます。
陸軍兵の弁護人「取調べの全過程をテープにとってくれと申しいれをいたしました」「もしそれができないのであれば取調べの過程で米軍の保安官の立会いをさせ取調べの任意性の担保をしてくれと」
通訳の正確性に対する不安や、事情を聞いた取調べ官が文章を作る、日本式の調書に対する不信感があるとして、取調べの全面可視化を求めたのです。そして、今月14日以降は、任意の事情聴取を拒否。県警は、逮捕状を取るか、書類送検かの選択を迫られています。
新垣勉弁護士「拘禁施設に被疑者が拘束されている状態ではなくて、普通の生活をしながら、一定の行動範囲を制限されているという状況にあるのではないかと」「果たして証拠隠滅の恐れを回避できるのかどうか、少し心配な点がありますね」地位協定に詳しい新垣勉弁護士は、アメリカ軍人・軍属の地位を定める、日米地位協定が、こうした理不尽を許しているとかねてから指摘しています。「日本の司法が遅れているから、米軍側に、身柄引き渡しを拒絶する特権を保証して、なんとかバランスをとろうとしている。しかしそのバランスの取り方そのものに基本的な問題があると」
久田記者に聞きます。日本の司法が遅れている、という言葉がありあましが。
「それは、日本の司法制度の下では、警察の留置場での長期間の勾留や、密室の取調べといった捜査手法が、アメリカから見ると遅れている、ということですね。どちらも、自白を強制される危険があるということで、受け入れられない、という理由があるようなんです。きょうも、渦中の陸軍兵は、ビデオ録画しない事情聴取には応じないという姿勢を崩していません。」
日本の司法制度自体が信用されていないんですね。しかしこのままでは真相解明に支障があるわけで、被害者や遺族が取り残されてしまいますよね。
「はい、身柄を確保できないことで、証拠隠滅や逃亡の恐れを指摘する声が多いのは事実で、実際にアメリカ本国に逃亡された例もあります。取材した新垣弁護士は、これを解決するには、地位協定のゆがみを直すしかない、という見解でした。」
新垣勉弁護士「だから捜査については、日本側がイニシアチブ(主導権)を取ってやる。」「ただ、被疑者の権利をきちっと守るために、地位協定で、アメリカ憲法に基づいた被疑者の権利をきちっと保障する。」「日本側がやるべきことが、きちっとできれば、身柄引き渡しを拒絶する特権を廃止しろ、ということが強く言えるわけですね」
つまり、取調べの可視化と、警察署での長期勾留、いわゆる代用監獄問題を解消し、起訴前の身柄引き渡しを要求しよう、という考え方ですね。身柄引き渡しの拒否という特権を与えるよりも、アメリカの人権意識にあわせて日本の司法制度を対応させる、という前向きな提案だと思います。
これを、軍人軍属に限る対応として地位協定改定でやるのか、全般的な捜査手法改革として進めるのか、どちらにしても、手を打つべき問題だと思います。