シリーズでお伝えしている「2009真夏の決戦」。きょうは、総選挙の大きな争点、経済です。政権選択選挙と言われる今回は、県内の経済界は、これまでにない動きを見せています。
知事「そういう選択というか考えもあり得るということだと思う。ですから私の方で企業の集団である団体の判断というのはなかなかコメントしづらい」
先月17日、定例会見で仲井真知事が述べた、このコメント。その「コメントしづらい経済団体」とはこれまでの選挙で、自民党の集票マシンとも言われ、保守票に大きな影響力をもつ、県建設業協会。協会は、先月中旬、これまでの方針を転換、今回の衆院選で、自主投票とすることを決めたのです。呉屋会長に、その真意を聞きました。
呉屋会長「リスクとして、自公を推して、民主党政権、あるいは民主党を中心とする政権に変わった場合に、我々としてはどういうスタンスで新しい政権と望めばいいのかということが問われてくるわけです。それに対してちゃんとした答えがなかなか用意できないと」「底流の大きな流れが変わっていくと、その流れの中で漂っていくしかないのかなという無力感も同時に持っておりまして」
政権交代が現実味を帯びる中、時の、政権与党との太いパイプが生命線である建設業にとって難しい判断だったと話します。しかし一方で、方針転換の裏側には、県内建設業の厳しい現状と、近年の自公政権に対する、強い不信感があります。
呉屋会長「あまりにもえー、政治の思いやりのない対応に」「大変な苦しみを味わっている状況で、そういう状況にしたのは一体何だったのかということを我々は率直に今回の選挙で問い、そしてまた意思表示をしなければいけないと」
謝罪会見 呉屋会長「ご迷惑、ご心配をおかけしたことをお詫び申し上げ、今後、こういうことのないように、最大限の取り組みをしていきたいと」
2006年、謝罪会見を行う呉屋会長。一連の談合問題の発覚です。この時を境に、県内建設業界の経営は急速に悪化します。公共工事の落札価格の下落や、工事そのものの減少。マンションなどの耐震強度偽装事件を受けた改正建築基準法の施行で、住宅の着工数は激減。そして、世界不況。談合問題を受けた、およそ110億円に上る県への損害賠償金の支払いを巡って業界と県との対立は、裁判沙汰にまで発展しています。
呉屋会長「それ(一部の建築士の犯罪)によってなぜ、一般の真面目な建築士や、建設業の人たちがそのしわ寄せを受けなければいけないのか、さっぱりわからない。これについて政権与党というものは、ちゃんとした説明を果たしていないと」
昨年度、県内の企業倒産件数96件のうち、半数を建設業が占めています。
業者「仕事ですか、ないですね」業者「かなり厳しいですね」業者「自民党さん、しっかりしてくれんと」「最悪なんですよ」業者「自民党から流れが離れていますけども、そういうのは感じますか?感じますね。もう、強く感じます。これは。」業者「今の政権変えないといけないと思うから、一応自分も変えようと思って」
振興策など、近年の、政府の沖縄に対する姿勢にも、不満はくすぶっています。呉屋会長は、今年3月、沖縄を訪れた麻生総理に面談の際、直接不満をぶつけました。
呉屋会長「最近の自民党、政府というのは、沖縄に対して冷たすぎると、それでは困りますよという苦言を申し上げました。」「政治とともに心中をしたり、することはできません。やっぱり会員企業それぞれの、社員と家族の幸せを、生活を守っていくのが私たちの建設業協会に与えられた役割だと思います」
このほか、沖縄1区と3区では、保守系候補者が分裂していて、それぞれの背景に建設業関係者がいることから統一候補を絞りきれないという、選挙区事情もあります。
しかし、こうした建設業協会の姿勢に、県経済界をまとめる経済団体会議の知念会長は「影響は少ない」と強調します。
知念会長「大半の建設業界の方々は従来通り、与党候補を支援していただけると考えています」「経済界としては、政権政党の候補者を支援すると」「与党候補を支援するということについては全く変わりはない。」
政権選択選挙と言われる今回の戦いでも、自公を支持する、これまでの姿勢はぶれないと主張します。
知念会長「そういう状況だから我々は従来の方針を変えるというそういうことは絶対ありません」「仮に政権が変わったら、新しい政権が沖縄の問題にどう対応するかですよ。それを判断して、我々は対応を考えるということであって」
建設業界だけでなく、まだまだ厳しさの続く雇用情勢、そして、今年に入り、毎月前年割れが続く、観光客数。これまで経験したことのない経済情勢のなか、経済界は、誰に沖縄の未来を託すのかその動きは、終盤まで目が離せそうにありません。