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沖縄戦での米軍による慶良間諸島への上陸や集団自決の事実に全く触れず、「米軍上陸が4月に始まった」と誤った理解も与えかねない中学歴史教科書が、文部科学省の教科書検定を合格していたことが10日までにわかりました。その教科書は「新しい歴史教科書を作る会」が編さんし、東京の「自由社」が発行する中学歴史教科書です。

自由社の教科書は、1945年3月のアメリカ軍による慶良間諸島上陸には触れず「4月にアメリカ軍は沖縄本島へ上陸し、ついに陸上の戦いも日本本土に及んだ」と誤って記述されていますが、検定を合格しました。また、教科書検定に絡んで大きな問題となっている集団自決の事実や日本軍の関与にも一切触れていません。

この教科書はほかにも誤った記述など、500か所以上に及ぶ検定意見が付き、2度に渡る再申請で合格した経緯もあります。

社会科教育研究者の琉球大学・山口剛史准教授は取材に対し「集団自決と言われる事件の記述もなく、住民がどのように沖縄戦に巻き込まれたかという記述もない」と指摘し「つくる会の教科書というのは、歴史の事実の内容について偏りがあると批判されてきた教科書。それが再度検定に合格するということについては憂慮する問題」と、教科書検定審議会や文科省の姿勢を批判しました。

会のあり方や透明性を高めるなど、様々な改革がされたという教科書検定審議会ですが、この歴史教科書は沖縄戦の一点をとっても慎重な検定が行われたとは言えません。今回の検定を巡って、あらためて文科省の姿勢が問われます。