あすの判決を前に連日激しい騒音を撒き散らすアメリカ軍、訴訟についても全く関知していないかのようです。嘉手納基地周辺の住民が早朝深夜の飛行差止めと健康被害などによる損害賠償を求めた裁判の控訴審判決があす、福岡高裁那覇支部で言い渡されます。判決を前に住民たちの生活の様子を取材しました。中村記者です。
朝早くからから深夜まで、戦闘機が飛交う嘉手納基地。
2000年3月「静かな夜を返せ」と基地周辺の住民5544人が原告となって飛行差止めと健康被害による損害賠償を求め裁判を起こしました。
しかし地裁判決は、早朝夜間の飛行差止めや健康被害を認めず、うるささ指数85以上の地区についてのみ、精神的苦痛による損害賠償を認めたものでした。
これは「うるささ指数80・75の地区」を損害賠償の対象とした1998年の旧嘉手納爆音訴訟の判断を下回るもの。
騒音がもっとも激しい北谷町砂辺地区。去年4月に行われた裁判官立会いの現地調査では、最大104デシベルの騒音を観測しました。
宮平シゲさん、基地の滑走路から直線にしておよそ700メートルの地点に自宅があります。
宮平シゲさん「最初はそんなになかったのよ。滑走路がこっちに来てから大変なことに」
自宅は防音工事を行いましたが、飛行機が上空を通過するたびに電話の会話は中断します。
宮平さん「飛行機がうるさいから、声だけは大きい」
爆音で不自由する生活。しかし、宮平さんはおよそ60年間過ごしてきたこの場所より条件がいいところはないから離れられないと話してくれました。
一方、地裁の判決で賠償が認められず、原告1660人の訴えが退けられた「うるささ指数80と75」の地区。
うるま市石川の東恩納地区は、うるささ指数85と80が同じ区の中にあります。
東恩納自治の会長をつとめる伊波美代子さん。うるささ指数の境界線まで案内してもらいました。
伊波美代子さん「ちょうどこの道を境にずっと(右が)80(左が)85」
この道を挟んだ左側がうるささ指数85。そしてこちら右側が80。まさにこの細い市道が賠償を受けられる境界線となりました。
伊波さんは爆音の調査に来た弁護士に初めて騒音区域のことを聞かされ、自宅が80の地区にあることを知りました。
伊波さん「生活のうえではまったく一緒です。85の地域も80の地域も生活のうえではなんら変わらないと思います」
見えない線が引かれたとはいえ、住民にとっては同じ東恩納地区。道を挟んで住民らが会話をする様子もよく見られだけに、伊波さんには納得できない思いがあります。
伊波さん「やっぱり平等に、生活している人の声も聞いて。小分けするのではなくて、生活状態もやっぱり見てほしい」
今回の裁判では、うるささ指数の範囲をどれだけ認めるかという部分のほか、4人の原告が聴力障害を起こした原因は基地の航空機騒音によるものだと訴えています。
住民が最も求めているのは平穏な「静かな夜」。判決はあす午後1時半に言い渡されます。