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運航を休止している名護市の民間ドクターヘリ「MESH」の再開をかけた活動についてこれまでもお伝えしていますが、思うように資金は集まっていません。

しかし、その資金難解決の道として、名護市辺野古への新基地建設に絡む交付金を使うという案が浮上してきました。

命と基地の狭間で選択を迫られる医師と、北部の人々の思いをお伝えします。

名護市の民間ドクターヘリ「MESH」の運航再開のため、支援を呼びかける北部地区医師会病院の救急スタッフ。

『現在、まだ北部の空に救急ヘリが飛ぶことが出来ません。皆様のご協力が必要です』

この日も大勢の人が支援の手を差し伸べていた。運休して約7ヶ月の間に集まった資金は3600万円余り。しかし、ここから活動経費を除いた残高は3000万円にも達していない。これでは年間運航経費8000万円に届かないばかりか、半年分の費用にもなっていない状況だ。

MESHが運休して以降、北部の救急は以前の状況に逆戻りしている。

去年の暮れ、国頭消防に救急要請の電話が入った。患者は奥に住む70代の男性。重い内臓疾患を患っていた。搬送する救急車の中では救急隊による懸命な処置が行われる。しかし男性はその後、搬送先の病院で亡くなった。到着までに2時間余りもかかっていた。

MESHが活動した約1年の間、北部の人々の多くの命が救われた。再開を望む声は強い。

奥区・玉城区長「やはり医療格差というのは広がるいっぽうですから、それを縮めるためにはどうしてもMESHを、ヘリを飛ばすしかないと思います」

奥区・金城初子さん「人の命は1分1秒を争う時もあるでしょう。あんな遠い名護まで。助かる命も助からないですよ。頼りだった緊急ヘリが飛ばなくなっているでしょ。それがもうとっても不安です」

MESHの責任者・小濱正博医師。運休後もMESHの存続を訴え続け、活動の中心にいる人物だ。

小濱正博医師「我々が考えていることは一つ。その地域の人たちの救うための医療環境をどう作るか。それにはもうヘリが必要なんです。それを運航するためには資金がいる」

医師たちの地道な活動によって支援の輪は広がった。しかし、肝心の資金は思うように集まらない。再開時期は当初の予定よりずれ込んでいく・・・。

ところが、その資金難を解決できる方法がMESHの目の前に現れる。それがアメリカ軍再編交付金だ。

再編交付金は、普天間基地の名護市辺野古への移設に伴い、国から支払われる基地の負担金。いわば迷惑料のようなもの。

命を守ることが基地の受け入れに利用されるのではないか。意見は割れる。

島袋吉和名護市長「人の命は再編交付金であれ、何であれ、やはり優先させないといけない」

しかし、名護市議会では反対の意見も根強い。

名護市議会・大城敬人議員「札束さえチラつかせれば、沖縄県民は基地の押し付けを容認するんだと。この再編交付金の本質がこの中にあるわけです」

再編交付金は是か非か、北部の人々の思いも複雑だ。

奥区・金城依子さん「(再編交付金であろうと)方法はどうでもいいです。どんな形のお金でも良いから使えるお金があれば、そういうものにまわしてほしいです」

奥区・金城初子さん「普天間基地(移設)はもう絶対反対したいんだけども、これは飛ばしたい、是非飛ばしてほしいんです。ですから今、もう二者択一というと私には決めかねる」

名護市辺野古で、新基地建設に10年以上も抵抗を続ける安次富浩さんは、再編交付金は「麻薬」のようなものだと指摘する。

安次富浩さん「医療も福祉も教育も、本来は国が見るべき問題です。その不足分を米軍再編交付資金で手を染めるということは、麻薬みたいなもの。安易になっていくわけです」

名護市は今年3月にも、再編交付金によるMESHの支援を議会で通す見通しだ。

地元の医者だからこそ、基地に対する複雑な住民感情を良く知る小濱医師。今、命を救うためのぎりぎりの訴えが続いている。

小濱医師「飛ばさなくては今のこの時点でも救える命が救えないということです。我々が目指すことは単純です、一つ。人を救うための仕事。それだけです。そのために皆、日夜頑張っているわけですから」

医者自らが地域の患者の命を守るために立ち上がっています。ところが、本来この問題を解決するために動かなければならない県や国は今のところ傍観する姿勢で、納得できません。

命は待ってはくれませんから、現場の医者はわらをもつかむ思いです。MESHが自らの翼で飛ぶためには、多くの人の支援が必要です。

この問題については、2月22日(日)の深夜2時10分からの全国放送「テレメンタリー」で詳しくお伝えしますのでご覧下さい。