去年2月、居眠り運転で事故を起こし自動車運転過失致死罪に問われている男の初公判が17日那覇地裁でありました。今回の裁判では、犯罪被害にあった人が刑事裁判のなかで被告人に直接質問などができる「被害者参加制度」が導入された県内初の裁判となりました。
被害者参加制度を利用したのは去年2月、沖縄自動車道で居眠り運転の車に追突され亡くなった2人の遺族です。
裁判では、居眠り運転をした事実は争われず、被告人に謝罪の意思がどれほどあるかを確認するのに時間の大半が費やされました。
遺族を代表して、亡くなった2人それぞれの父親が質問に立ち、検察官に促されるまで謝罪にこなかったのはなぜか、などと問いただしました。
この質問に対し被告人とその父親は言葉を選びながら「遺族の気持ちを考え、直接の謝罪は控えた」などと答えていました。
1999年に東名高速で飲酒運転の大型トラックに衝突され2人の幼い娘を亡くし、危険運転致死傷罪適用のきっかけとなった遺族の井上保孝さんは取材に対し「なぜそういう事故が起こったのかということがわからないままに裁判が終わってしまうという納得できない部分があったのでは。加害者に『何でこんな馬鹿なことをしたんだ』ということを直接伝えることができるという意味でも加害者遺族の裁判への参加というのは意味があるんじゃないか」と被害者参加裁判の意義を強調しました。
今回の裁判を取材した久田記者です。久田さんはこれまでにも様々な裁判の取材をしていますが、県内では初めての被害者が参加してのきょうの裁判、どんな印象を受けましたか?
久田記者「遺族はきょう、今まで検察官しかできなかった被告人質問を行いました。質問にかなり強い感情をこめていたのが印象的でした。これは、女性の遺族に直接の謝罪があったのが事故の8ヵ月後で、男性の遺族にはいまだ直接の謝罪がないためだと思いますが、質問は被告人に謝罪する気持ちがあるかどうか、という点に集中していたように思います」
「裁判のあり方が変わる」
今年5月から始まる「裁判員制度」も、今まで一般には縁遠かった「裁判官」に近い立場になって、国民が裁判に参加するというものですし、「被害者参加裁判」も実際に検察官の横に立って、被告人などに質問するわけです。
法律の知識だけではなく、私たちの「常識、一般的な感覚」を裁判に取り入れるわけで、裁判が身近なものになるということがまず言えると思います。
しかし「被害者参加制度」では、遺族らの報復感情が入りすぎるのではという懸念もあります。また、東京で行われた裁判では、被告人に侮辱的な言葉で反撃された例もすでに出ています。こうした問題点が出てくることは想定されていましたから、3年後には制度を見直していくことも決まっています。
「被害者参加制度今後の流れは」
これまでの刑事裁判では、ほんとうに遺族が知りたいことは置き去りのまま進むこともあるといわれていました。きょうのように、被害者が知りたいことをしっかり質問できるのであれば、被害者参加制度は今後も広がっていくのでは、と思います。