昨日からお伝えしている雇用危機、2回目の今日は新卒の現場についてお伝えします。
景気悪化の中、企業も大幅に業務を縮小したり、人件費をカットするなど、ありとあらゆる手段で生き残りにかけています。それは社会に希望を抱く学生たちにも影を落とす結果となりました。
内定取消
学生にとっては長くつらい就職活動。その努力の証である「内定」。しかし、約束されたはずの入社が取り消されるという事態に学生の間には、何を信じればいいのか、社会に対する不信感と失望が広がっています。
県内ではリゾートホテルの破綻により18人の内定が取り消されたほか、県外企業からも4人が内定を取り消されています。
県キャリアセンター・荷川取隆センター長「県内企業では内定取消はほとんどないが、県外は厳しい状況。学生さんはこれまで就職活動してきて、最終的に選んだ企業から内定を取り消されると非常にショックですよね」
三上さん「切ない気持ちです。できればその会社に行きたかったので、条件を下げてでも入社することはできないのかと話したのですが、社員みんな厳しいということで」
県外企業に内定が決まっていた三上さん、去年8月に内定取消の連絡がきました。
三上さん「まずはメールで、その後郵便が来て、会社の経営状況が急に厳しくなったと」
それは皮肉にも内定者研修から帰った2週間後のことでした。そして、三上さんは内定取消を受けた後、再度就職活動を始めます。
三上さん「2回目の就職活動は、春とは全然状況が変わっていて、乗り遅れている学生がすごくめだっていた。先月までは『あの会社できらきらの社会人生活を』と思っていたのに、今はこの人たちと一緒の立ち位置なのかと思って、厳しいなと」
2回の就職活動で受けた企業は50社以上。精神的にも体力的にも限界に追い込まれながら、やっとの思いで別の企業から内定をもらいました。
三上さん「ものすごく恩を感じています。拾ってもらったような。ずっとそこで頑張っていこうと」
求人減少
『内定取消された友達もいて、とりあえず不安ていうのが強い』『決まってないです。求人も減っていったら、どうやってやっていったらいいか考える時間ばかり』
もうひとつ学生を苦しめているのが、求人数の減少。県外企業が沖縄での採用活動を自粛、県内企業も来年度の方向性が見えないと採用を控える動きが出ていて、大卒者の求人は去年よりおよそ2割減っているとみられています。
県キャリアセンター・荷川取センター長「求人を行なうための予算が縮小されている」
内定率も調査開始の10月から既に去年を大きく下回る結果となっています。今年3月卒業見込みの大学生の就職内定率は28.8%と全国平均は8割を超える中、危機的状況です。
そこで、危機感を感じた大学側が企業を集めて、先週、緊急の合同企業説明会を開催しました。
県私大就職指導協議会・金城雅彦さん「経済状況が急に悪化したことを受け、まだ就職が決まってない学生がどのくらいいるか。例年より2〜3割増えていると。大学が連携して企業に採用止めないでほしいと」
参加企業は15社。中にはこの状況を逆手にとって、いい人材を確保しようという企業もありました。
「何でもできるオールマイティーなスタッフをみんなで作っていきたい」
沖縄市にある「東京第一ホテルグランメールリゾート」。ホテル業界が、経験者を求める傾向の中で、新卒者の採用を積極的に行なっています。
東京第一ホテルグランメールリゾート・松村憲佳支配人「新卒の方は本当に一からスタートできて、我々の教育システムの中でしっかりトレーニングを積んでいきながら成長できる。そのために新卒の方の採用を積極的に行なっています
東京第一ホテルでは去年、教育部門を立ち上げ、内定の段階からマナーや座学などの教育、入社後はオンジョブトレーニングと称して、業務をしながらの社員教育を徹底して行なっています。
オンジョブトレーニング中
『たとえばお子様がいた場合というのはドアを開け閉めはどういう注意が必要ですか?』『タクシーだと出口が反対側が開くので、お子様が乗ると先に下りることになるので、よろしければお母様先に乗っていただいてと』
松村憲佳支配人「やはり人なんです。人材をとにかく重要視していて、教育に非常に力を入れています」
『お気をつけてお帰りくださいませ』
VTRに出てきた三上さんは、内定取消を受けた会社とはよく話しあった上で円満に解決したということですが、何より2回の就職活動がとても辛かったと話していました。
不安な経済情勢の中、学生も必死で内定をとろうと頑張っています。企業側も新卒者の採用や内定は社会責任として確保する努力が求められています。