オバマ新大統領の就任式を今月20日に控え、陸や空から厳しい監視の目が光る厳戒態勢のワシントンD.C.。
岸本記者「仲井真知事の独自外交は、国務省への直接的な要請からスタートしました」
軍に関連する要請項目は「基地の運用に伴う事件・事故の防止」と「基地の整理縮小」、そして「日米地位協定の抜本的な見直し」の3点。
仲井真知事「(県の要請に対して)非常に弾力的な感じをもっていると思った。ある意味、いいタイミングで沖縄から来たという返事があった」
国務省のアルビズ国務次官補代理は現在、次の政権への政策移行チームが省内で活動していることを県側に説明。新政権の誕生前の知事の直談判を評価しました。
岸本記者「仲井真知事が連邦議員会館に入ります。アメリカ議会も活用して、沖縄の基地問題の解決を訴えます」
訪米2日目からは、民主党の議員や政府系のシンクタンクを相次いで訪問。
知事は、野党が過半数を占めている県議会がアメリカ軍再編の推進という要請項目を認めなかったため、普天間の危険性除去の実現という言葉で要請を繰り返しますが、日米合意を守り通す立場のアメリカ側との議論は深まっていきません。
仲井真知事「一般論として普天間に対する関心はあるんですが、具体的なことは(新基地の滑走路を)どこへどう出すという内容はほとんどなかった」
知事はアメリカ政府とは直接、滑走路の位置などについて交渉していないことを強調。
仲井真知事「(米軍基地は)沖縄本島の面積の18.4%あります」
厳しい交渉が続く中、現地の大学で研究者を対象に行った講演では、県内の基地の広大さなどを説明して返還の促進を訴え、一定の理解を得ました。
シンポジウム参加者「彼は沖縄が置かれた状況を具体例とともに、わかりやすく説明していたと思う。私は沖縄に行ったことがあるけど、海兵隊の数を減らすことは沖縄のためにもなると思う」
シンポジウム参加者「とても興味深かったです。知事の立場から米軍基地の役割とともに、過度な集中が起こす問題点も理解できた」
しかし肝心のアメリカ政府の対応は一向に変わらず、最後の要請先となった国防省でも、セドニー国防次官補代理から「基地の政策については日米の政府間で合意するもので、県と合意するものではない」と突き放された回答を受け、知事は要請項目にはなかった新基地の滑走路の沖合移動の話まで持ち出し、政府の強引なやり方をけん制しました。
仲井真知事「(辺野古で)環境影響評価をしている段階で、1mmも修正しないという考えはもともとあり得ない。もしそういうことをアメリカ政府が期待しているとすれば、それは無理という話はやってきた」
沖縄の声を直接伝えるという目的は達成したものの、具体的な要請項目については政府の厚い壁に阻まれた仲井真知事。今後は地元の声をどう政府間の外交テーブルに乗せていくかが最大の課題となります。
岸本記者「アメリカ西海岸のサンフランシスコに移動してきました。仲井真知事はきょうからIT企業が多く集まるシリコンバレーで企業誘致活動を展開します」
サンフランシスコでは世界最先端のIT企業を県内に呼び込むため、トップセールスを展開した知事。
県情報産業振興課・玉城恒美班長「この10年間で沖縄は200の企業を県内に誘致し、日本国内では最多の数です」
世界96カ国にユーザーを持つこのソフトウェア会社は、沖縄からの誘いに前向きな姿勢を示します。
ジャスパソフト・ブライアンCEO「会社に対する減税措置や従業員の雇用のサポートは素晴らしい。私達のような小さな会社がアジア展開で求めているものです」
そして今回は、現地と沖縄の企業が業務提携に向けた覚書を交わし、訪米の成果として一つ実を結びました。
沖電グローバルシステムズ・玉城健社長「我々沖縄のIT企業がOSS(オープンソースソフト)の仕組みをうまく使って、安価でソフトを開発し、機能の良いソフトを提供できれば」
経済の立て直しを最優先する仲井真知事もIT産業の発展に期待感を示します。
仲井真知事「新しい時代とやり方にきちんと順応、適応し、先へと進めるようになるといい」
就任から2年の折り返し地点で訪米した仲井真知事。県内の失業率は就任当時と変わらず高いままですが、残り半分の任期でどこまで具体的な結果を出すことができるのか注目されます。
アメリカ政府に「いい時期に来た」と迎えられたという仲井真知事ですが、本題の普天間の危険性除去については議論がかみ合わず、地位協定の改正についてもアーミテージ元国務副長官から「なんら問題ない」というような回答さえあったということで、つき返された感も残ります。
知事は6月にも再び訪米したいと語っていますが、その前に今回の成果をしっかり県民に示す必要があります。