西表のリゾート問題です。4年前に浦内川の河口にオープンした大型リゾートホテルをめぐって、地元住民らが環境を破壊すると訴え、去年最高裁まで争われました。
第一次訴訟は住民敗訴で終わりましたが、その被告になった企業が今度はさらに奥地、船でなければ渡れない船浮という小さな集落の土地を16ヘクタールも買っていることがわかり、地元では不安が広がっています。
西表島の一部でありながら、船でしか渡れない「船浮集落」。人口42人。小中学校の生徒は4人で車もなく、まさに手つかずの自然が残る地域です。
その船浮でも最も美しいイダの浜を含む16.5ヘクタールが、今年5月から宮古・八重山でリゾートを施設を経営するユニマットグループの所有になっていたことがわかりました。
池田豊吉さん「(土地を買って)何をするのか。これは計画によっては抵抗せんといかん」
集落より北の大部分が、住民の知らぬまにユニマットの手に渡っていました。
もともとは集落の共有地にしていたものが、戦前、税金の関係で一部が個人に売却され、長く那覇の資産家が持っていましたが、今年4月に石垣の不動産会社が買取り、翌月にユニマットに転売されたものです。住民が畑として使っていた個人の所有地も囲まれた形です。
池田さん「進入路も全部今ユニマットのものになってしまって、そうするとわれわれの個人所有地は中にあって、どこからも行くことができない」
寝耳に水の船浮公民館では早速アンケートを取ったところ、8割以上の住民が企業の進出に反対でした。
嘉目信行・公民館長「こういう業者が入ってきても、地域には何のメリットもない。ただ、うるさく、汚されるだけ。地域の人たちは自分たちで生活をしている、民宿をやったり」
ユニマット不動産は「まだ事業計画はない」としていますが、一説には10階建ての大型ホテルの構想があるいわれ、不安はますばかり。
西表は、世界遺産の登録に向けた調査予算もついたばかり。衝撃は島全体に及んでいます。
ユニマット訴訟原告団長・石垣金星さん「世界遺産の登録に際して一番障害になるのが、ユニマットが計画しているような大型ホテル。いったん生態系が破壊されると、取り返すことはまず不可能。それを何とかこれ以上の乱開発、むちゃくちゃな開発は、なんとしてでもやめさせないといけないというのが今の正直な思いですね」
リゾート会社の土地の取得自体にはなんら法的な問題もない中、自然と共に暮したい住民の権利をどう守るのか。小さな集落に今、重い空気がのしかかっています。