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現在、救急救命医療の現場は技術の向上などによって格段に進歩を遂げているといわれます。しかし、どんなに技術が発達しても、急患を病院まで搬送する時間については超えられない壁のようなものでした。

きょうは命を左右する「時間」という視点から、今の現状と課題について考えます。

『一斉放送レスキュー座間味、レスキュー座間味。レスキュー座間味については使用航空機、飛龍07を準備されたい』

陸上自衛隊第101飛行隊。本土復帰以降、これまでの36年間で、離島から7860名あまりの急患を搬送してきました。現在でも離島の救急医療を支える大きな存在です。

その第101飛行隊が先日、県の防災課や離島の行政機関、関係医師を招いて会議を開きました。

その目的は「緊急患者の空輸要請にかかる煩雑な手続きの改善」

現在、離島で急患が発生すると、搬送依頼はFAXでしなければならず、離島自治体から県、県から陸上自衛隊といった形でFAXが届き、その確認作業を経て実際に出動するまで、何と1時間〜2時間以上もかかります。

これで、急患空輸と呼べるのでしょうか?

喜界徳洲会病院・田中誠院長「患者さんを搬送するのに、こんなに大変なのかと本当に実感しました。ヘリコプターを待っている時間がいかに長いか」

参加者は実際の煩雑な手続きを目の当たりにし、改善しなければならないことを痛感しました。

しかし、制度開始以来、36年も手付かずだったのです。この会議も自衛隊が呼びかけたもの。本来なら県が主催すべき会議のはず・・・。県の救急体制への姿勢があらためて問われる会議ともなりました。

県防災危機管理課・山田政貴主任「関係機関が一堂に顔を合わせてやりとりするというのが、なかなかない」

陸上自衛隊第101飛行隊・豊田武史一等陸尉「関係される方についても、同じ認識をそれぞれの視点で共有できたのは良かったのではないか」

ところで昨年度、自衛隊は昼間の出動が激減しました。その理由は呼んですぐに駆けつける2箇所の民間のドクターヘリが活躍したからです。

浦添総合病院・井上徹英院長「一番の理想は“空気のような存在になる”こと。ドクターヘリだとか、誰も意識していない。それでいてちゃんと社会をきちんと支える存在。私はそれが理想です」

先月県内の関係者が出席して行われたドクターヘリの第2回運航調整委員会。

会議では現在、浦添総合病院が運営する民間ドクターヘリ「U-PITS」の100箇所程あるヘリの着陸場を、学校や漁港など、公的機関の協力を得て、250箇所まで増やすことを調整していて、実現すれば、より早く急患の近くへとヘリを降ろすことが可能となります。

ちなみに、現在13道府県で14機が配備されている公的ドクターヘリ。2001年年度から配備が始まり、2007年度からは大阪や埼玉、福島が加わって、沖縄は今年12月に運航が始まります

急患の下へ、空から15分程で駆けつけることが出来るドクターヘリは年々その評価が高まり、搬送実績も年間平均350件(全国平均)を超える程になりました。

「MESHサポート」小濱正博医師「自分のところも欲しい、しかしその資格がない。厚労省からの援助を受けられない、自治体からも受けられない、でもヘリは欲しい。でも独自でやるだけのお金はないと」

存続問題がクローズアップされている名護の「MESH」。名護の医師会病院そばのヘリポートから北部一帯を15分でカバーするエリアにあり、国頭や伊是名、伊平屋、伊江島などからの要請も数多くあります。

一方、読谷にヘリ基地を置く浦添の「U-PITS」は、15分エリアでは中南部一帯と粟国、座間味、渡嘉敷島をカバーできるのです。本当にヘリは1機でいいのでしょうか?

動き出そうとしている新たな救急医療ドクターヘリ。しかし、本州の3分の2という広大な県域を要する沖縄では、恩恵にあずかるのはごく一部とも言えます。

「MESHサポート」小濱正博医師「我々が目を向けるのはそれに漏れた地域、カバー出来ない地域の医療システムを変えていかなくてはいけない。それは我々にしかできないわけです」

存続に向けて支援の輪が広がっている名護の民間ドクターヘリ「MESH」は、今月の初旬に運航再開を予定していましたが、資金調達と運航会社との調整が間に合わず、今月の下旬、あるいは来月初旬再開へと日程がずれ込んでいます。

行政だけでなく、民間の力も求められています。