改正道路交通法が施行されて10日。後部座席でもシートベルト着用が義務化されたのはご存知の方も多いと思います。しかし、余り知られていない改正点もあります。久田記者のリポートです。
バス運転手「お客様のシートベルト着用をよろしくお願いします」
道路交通法の改正点の中でも認知が進んでいるのが、全ての座席でのシートベルトの着用義務化。バスやタクシー業界では、乗客への周知に苦心しています。
タクシー運転手「まだ浸透してません、はっきり言って。今のところ2割程度協力していただければいいほうかな」
タクシー客「好ましくない。単純に面倒くさいから」
バス乗客「(つけてみて)何ともないですね。普段どおり、車に乗ってますから」
普通乗用車の後部座席では、シートベルトの着用率が1割に満たず、以前からその危険性が言われてきました。今回の改正は、どの座席でもシートベルトで乗客の安全を確保しようという狙いですが、そもそも、シートベルトをしないとどれほど危険なのでしょうか。
県警交通企画課・仲村智成管理官「事故の衝撃で後部座席の乗員が前方に飛び出し、前席乗員の頭部に衝突して、怪我を負わす確率が高いからであります」
時速100キロの車にマネキンを乗せた追突実験の映像。シートベルトをしていないと、体を前に投げ出され、前の座席に猛烈な勢いでぶつかっています。シートベルトをしないことで、前の人の命を危険にさらすのです。
実験結果では、後部座席の人がシートベルトをしていない場合、着用していた場合に比べ、前の人が頭に怪我を負う確率は50倍という試算です。
法律だからというよりも、自分と身の回りの人の安全のために、どの座席でもシートベルトを締めるようにしたいものです。
他にも、75歳以上の高齢運転者の「もみじマーク」表示義務づけや、自転車は原則車道を通行することを明文化するなど、改定は多岐に渡っています。中でも、私たちが今回注目したのは、重度の聴覚障害者が免許を取得できるようになったことです。
津嘉山自動車学校・与儀喜史次長「これまで90db以上の音が聞こえない者は運転免許が取得できないとあったものが、音が全く聞こえない方でも運転免許を取得できると」
免許取得の条件はワイドミラーの取り付けと、聴覚障害者標識をつけることだけです。ただ、音が聞こえないことを意識した教習を受ける必要があります。実際に体験してみました。
教習の特徴はあえて壁を作り、視界をさえぎって運転すること。
久田記者「おっとっと」
この場合、対向車はクラクションを鳴らしてカーブに進入していますが、それが聞こえないため、とっさに回避しています。しかし、最初の半分ほどの速度で運転すると・・・。
与儀喜史次長「向こうも回避することが可能ですよね」
安全確認をしっかり行うと同時に、ゆっくり丁寧に運転する様子を周りに見せれば、事故の恐れは健常者の場合と変わりはないのです。
この自動車学校では、緊急車両に気づくための教習に欠かせない赤色灯、ワイドミラーのほか、自分がクラクションを鳴らしていることを光で表示するライトを作るなど、独自の準備もすすめています。
学科教習は難聴の教習生と同様、筆談で行う方針で、意思疎通に不安は全くないと言います。
与儀喜史次長「車線変更の時期であるとか、特別なサインは意思疎通ができるように、テキスト等を用いて教える。今回の道交法によって、道が開けましたので、社会に1人でも運転できるんだという状態を作ってあげたいと我々は考えています」
これが聴覚障害者標識の実物です。県内には、ほとんど耳の聞こえない重度聴覚障害者が2200人ほどいるということです。どの教習所でも受け入れ準備が進むといいですね。