八重山地方は、ちょうどサンゴの産卵の時期を迎えています。その石垣島周辺で、サンゴを食い荒らすオニヒトデが大量発生の兆しを見せています。そこで6年前にオニヒトデの大量発生を経験し、捕獲活動のすえにその被害の拡大を阻止し、サンゴを守り抜いた座間味のダイビング協会のメンバーが今月、石垣で地元のダイバーと初めての共同の捕獲作戦を実施しました。実近記者です。
港に集まったのは石垣のダイバー10人と座間味のダイバー7人。
八重山ダイビング協会・佐伯信雄さん「座間味ダイビング協会の方7人とそれから八重山ダイビング協会の共同オニヒトデ駆除になります」
オニヒトデの捕獲作業は県内各地で行われていますが、地域を越えた連携はこれが初めて。
座間味ダイビング協会・又吉英夫会長「いつも自分のとこでしか駆除してないから。今ちょっと楽しみにしています」
実近期者「今、港を出港しました。海を越えたオニヒトデの捕獲作戦が、いよいよこれから始まろうとしています」
海を越えたダイバーの協力。その背景には、石垣周辺のサンゴの深刻な現実があります。
石西礁湖は去年、過去最大の白化現象や大型台風の到来で、壊滅的な被害を受けました。一方、今年に入って、八重山周辺で捕獲されるオニヒトデの数は劇的に増加。40年近くこの海を見てきた佐伯さんは、去年以来弱っているサンゴに、オニヒトデが追い討ちをかけようとしていると指摘します。
佐伯さん「まだ準大発生状態」
石垣島の南、海岸からおよそ1.5キロのダイビングポイント。台風の影響で、当初予定していたオニヒトデが最も多いとされるポイントを避けての活動となりました。先端がフックの形をした駆除棒を手に、一人一人海に入っていきます。参加者のほとんどはダイビングショップのインストラクター。
水深は7メートルから10メートルほど。様々な種類のサンゴが見渡せますが、そのいたるところに斑状に白くなったオニヒトデの食害が見られます。そのサンゴの下を覗くと…。いました、オニヒトデです。体長およそ30センチ。昼間は多くがこうして影で休んでいます。
又吉さん「(大量発生の時は)オニヒトデの上にオニヒトデが重なっている状態だった。一箇所で1000匹とかね」
これは6年前、座間味島周辺で大量発生したオニヒトデの映像です。テーブルサンゴに幾重にも覆いかぶさるオニヒトデ。座間味ダイビング協会は、この頃からダイバーによる集中的な捕獲作戦を本格化。被害拡大を防いだ実績があります。
その座間味のダイバーが応援に入った今回の捕獲作戦。オニヒトデはこれから産卵の時期を迎えます。これ以上の発生を防ぐため、参加者はおよそ2時間かけてオニヒトデを一つ一つ捕獲。サンゴを守る有効は方法は、こうした地道な人海戦術しかありません。もちろん全員がボランティアです。
座間味ダイバー「すごいっすね、はい」「けっこういますね」
又吉さん「食べられた跡がたくさんありますね」
佐伯さん「やっぱり、ずっとやってきた人たちだなと思って(笑)」
港に戻ると、捕獲したオニヒトデが陸に上げられました。中には卵をもったオニヒトデ多く見られます。この日の作業では182匹のオニヒトデを捕獲しました。
又吉さん「このぐらいの数がいれば、獲らなければ完全にサンゴが死んでしまう。今、その量は完全にいますから。卵を出す前に獲らないといけないですからね。その短い期間の内に、みんなでオニヒトデを駆除する。だから大量発生とか異常発生したときに、お互いに助け合いがきる可能性が出てきました」
佐伯さん「(オニヒトデの)大発生の原因に早くたどり着かなきゃいけない。そのためにも各地域でしっかり交流し合いながら、何でこういう大発生につながったのかという、もとの部分に歩み寄らないと。後手後手の駆除になると、何の成果にもならないと思うんですよね」
作業を終えた夜、石垣と座間味のダイバーによる交流会が開かれました。
座間味ダイバー「入れる袋も網にすると、すごい楽で…」
座間味のダイバーが、石垣のダイバーに自分たちの経験を語ります。
座間味ダイバー「天気が良くて、中に入り込んでいるんですよね。例えば太陽がまだ東にある場合は、西側の陰になっているところを探すと(オニヒトデが)いる傾向がある」
八重山ダイビング協会・津山太造さん「(Q:きょう実際に話してみて、実際に刺激になることとかありますか?)すごくありますね。これで一つの交流をとり、次からもっといろんな情報交換できれば、もっといいものができるのかなって」
座間味ダイビング協会・又吉泰平さん「みんなたぶん同じ気持ちじゃないですかね、石垣の人も自分たちも。サンゴを守るために。(沖縄の)サンゴの卵が、一番(石垣から)発信されるから。これからの世代につなげていくためにも」
海を守るための、海を越えた活動の輪はこれから広がろうとしています。台風の影響で、当初の予定より規模は小さくなりましたが、お互いにそれ以上の収穫があったようですね。それぞれの協会では、今後も連携を密にして、民間主導でオニヒトデに関するネットワークを作っていきたいと話しています。