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1975年、本土復帰を記念して開かれた沖縄海洋博。その海洋博で、世界的な芸術家が沖縄のために制作した一つの作品が展示されたことをご存知でしょうか。

その平和を願うオブジェが、沖縄に帰ってきています。比嘉記者です。

33年ぶりに沖縄の地に戻ってきた太陽の神。スペインの芸術家、サルバドール・ダリの手による作品です。沖縄海洋博に展示されていた、その事実を知る人はいま多くはありません。

この作品を沖縄に「里帰り」させる計画を進めてきたのが「ダリ・プロジェクト」実行委員会のメンバー。およそ2年の準備期間を経て、作品の里帰りを果たしました。

画家の溝部達司さんは、ダリの古くからの支援者で、スペインの貴族・キュロス伯爵のコレクションの中にこの彫刻を発見し、沖縄に戻す交渉を続けました。その結果、3ヶ月間、沖縄への貸し出しが決まったのです。制作を依頼した伯爵もそしてダリも、太平洋戦争のさなか、沖縄という島が戦場となった事を知っていて、それが彫刻制作のテーマになったということでした。

溝部さん「二度と戦争のないように、という思いでダリが作ったと聞きました。これこそ沖縄にあって、政治や宗教を超えて、アート・芸術の部分で平和を語るテーゼになるものだと思います」

33年前の沖縄海洋博、そのスペイン館に展示された彫刻。世界的な芸術家が平和への思いを込めた作品ながら、海洋博後に訪れた危機的な不況は、芸術家の平和への思いをいつしか忘れさせてしまいました。

実行委員会の事務局長・白石さんは、海洋博とその後の沖縄を冷静に見つめ、沖縄の歴史を振り返るモニュメントに思いを馳せます。

白石さん「沖縄海洋博を成功させるだって、ワーッとお祭りをして、いろいろ苦しいことも聞いたし見ましたけど、悪かった時期もよかった時期も含めて歴史ですから。歴史を一つの形で見ていくという意味で。僕まだ見てないんですけど、楽しみにしてます」

33年のときを経て、かえってきたダリの心。実行委員会では各地で企画展を開き、出来る限り多くの人に作品を見てもらい、そして沖縄の平和を願ったこの作品をこの地に戻したいと考えています。

溝部さん「作品を作った作者が“沖縄”というタイトルをつけた時、やはりそのタイトルの地に返したいという思いが絶対ダリにもあると信じてるんです」

溝部さんは同じアーティストとして、ダリへの思いをこう語っていました。

実行委員会ではこの企画展を「海洋博が残した沖縄の宝」と銘打ち、将来はこの「ダリの思い」を貸し出しではなく、沖縄の宝にできるよう活動していく方針です。