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イラク戦争が始まる直前、この戦争に異議を唱えて辞職したアメリカの外交官がいました。

アン・ライトさん。市民グループの招きで沖縄にやって来ました。これが2度目の訪問です。1度目は36年前の日本復帰の年、アメリカ陸軍の大佐だった頃。ライトさんはアメリカの外交官と陸軍大佐を務めた人物です。

イラク戦・開戦前にパウエル長官に書いた「辞職状」より『私は今までほぼ30年にわたり、最も隔離され、危険とされてきた世界各地で国に奉仕してきました。私はアメリカに奉仕し続けたいと願っています。しかしながら、私は現政権の政策を支持し、遂行する事が出来なくなりました。現政権への異議のため、心ならずも長年のアメリカへの奉仕をやめ辞任を決意しました』

アン・ライトさん「政府がやろうとしている事に反対を唱えると、政府はそんな事はいけない、非愛国者だという言い方をします。でも真の愛国者というのは、政府の間違いを指摘してくれる人なんです」

ライトさんは現在、イラク戦争を止めさせようと平和運動を展開しています。ホワイトハウスの前や議会で声をあげて抗議し、逮捕された回数は実に15回にもなります。

観客「かっこいいじゃないですか。だってバリバリのエリートがおうっやめてやるぜって。かっこいいなあ」「(私はやっぱり)沖縄のことが好きなので、(ライトさんに会ってそういう力を)愛しているからNOって言っていいんだよっていう事を、力をもらったかなという感じでした」

アメリカが海外に基地を置き、そこで事件や事故を起こしては、アメリカ人を嫌いになる人を世界中に増やすだけだと、ライトさんは海外の全てのアメリカ軍基地の撤去を求めています。

この日ライトさんは、アメリカ軍基地が集中する沖縄の現状を確認したいと基地や戦跡を回りました。

大久保さん「多いときには朝7時から夜7時まで、多いときは300機の発着があります。ですからだいたい1分半に1機の割合で飛ぶときもあります」

移動の途中アメリカ軍機が上空を飛びました。

ライトさん「あの下りてくる飛行機はKC135空中給油機ですね。ノズルを伸ばして給油する。私は給油する時に乗った事があります」

陸軍大佐だったライトさん。軍隊時代の話になりました。

ライトさん「私は陸軍のパラシュート部隊にいたんです。実際に飛行機からパラシュートで降下もしました」

車内の話題が沖縄のパラシュート訓練に移り、沖縄では兵士が民間地域に下りたり、さらに過去にはパラシュートで降下されたトレーラーに少女が押しつぶされ亡くなったと説明されました。

ライトさん「戦後60年も、これだけ多くの米軍基地が沖縄にあって、沖縄の人々の生活は基地のために本当にいろんな困難を抱えていますね。

大久保さん「ごらんになって分かるように、基地の周りには住宅地が密集しています。13の小中学校、高校、大学がある。保育園や幼稚園もあります。それも含めると調べた範囲では88あるんです」

ライトさん「これは基地を置くのに適当な場所ではありませんね。軍隊はいつも一番いい場所を取ってしまう。住民には日米安保の為に必要だと言って。でもそんな事はないわよ。彼らがこの土地を持つ必要は無い」

宜野座さん「ジュゴンの藻場には防衛省が調査の機材を設置しているから、ほらジュゴンってこんな風に餌を食べるでしょう。だから餌を食べづらいんですよ」

今回、ライトさんが強い関心を持って訪れたのは、新しい基地の建設計画がある辺野古です。大規模なサンゴ群とジュゴンが生息できる自然環境を壊してはいけないと思っているのです。

ライトさん「この海はとても美しいのです。彼ら(米軍)だって知っているし、兵士がそう言うのですから」

ダイビングが趣味のライトさん。辺野古の海の美しさに感心しきりです。

ライトさん「こんな美しい場所に基地を造るなんて絶対に許せない。特に全てを破壊する基地は造るべきじゃない。こんな貴重な場所はぜひ守るべきです。基地を造るなんて最悪だわ」

ライトさんにとって36年ぶりの沖縄。建物が立ち並び、人口が増え、街の印象は変わりました。

過密な街の大きな基地。そして自然が残るやんばるへの新しい基地建設の計画。その実態に憤ります。

ライトさん「基地返還という事でいえば、アメリカ本土の基地は縮小されているんです。それなのに外国の基地、沖縄の基地を拡張しようとするのはどうしてなんだと、日本政府は国民やアメリカ政府に迫るべきなんです。アメリカ人も日本人も戦争反対と声を大きく上げてプラカードを出してやる人はそう多くはいないと思います。だからこういう事はやらなくても、自分のやり方で戦争をやめて欲しいという事はやれると思う。私がやっている事がみなさんに勇気を与えるのであれば、私はすごく嬉しい」

ライトさん「Stop Bases! No more Bases! Save Dugons!」

今回、ライトさんは南風原陸軍病院壕も訪れました。そこでは63年前の戦争を証言している壕だと話し、その悲惨なことが今、イラクやアフガニスタンで起きている。そこの人々が63年前の沖縄と同じ苦しみを受けている。戦争を止めなければいけないと訴えていました。

元外交官ライトさんの言葉に、戦争を起こしていい理由などないとあらためて感じます。